【9月8日 AFP】(写真追加)イスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)擁護を拒み続ける頑なな姿勢をめぐり、国際社会から厳しい目が向けられているミャンマーの事実上の指導者アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問(72)だが、国内では、イスラム系少数者に対する負の感情を背景に賞賛する声が上がっている。

 西部ラカイン(Rakhine)州では8月25日以降、ミャンマーの治安部隊とロヒンギャの武装集団の戦闘が激化しており、地域のロヒンギャのが大挙して避難している。過去2週間で約16万4000人が土地を追われ、隣国バングラデシュに入国しており、その膨大な避難民の数に国際社会は衝撃を受けた。

 仏教徒が多数を占めるミャンマーでは、市民権を拒否され、不法「ベンガル」移民とのレッテルを貼られたこの無国籍少数民族の歴史の中で、直近の戦闘は、最も新しい暴力事件として記録されることとなった。

 衝突をめぐる政府の対応に、世界のイスラム教国家や国連(UN)からミャンマー政府への非難の声が寄せられている。その一方で、軍事政権に対する長年の平和的反対運動において国内外から賞賛を集めたスー・チー氏に対しては、ロヒンギャを擁護する姿勢をみせるよう、国際社会からの呼びかけが行われている。

 しかし、スー・チー氏はこの呼びかけに応える姿勢を見せていない。そして、このロヒンギャ問題が、軍政からの脱却を目指す同国に暗い影を落とし始めている。

 かつては自由への導き手とスー・チー氏を称賛した人権擁護団体も、現在の同氏の姿勢には批判的だ。国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)のジェイムズ・ゴメス(James Gomez)氏は、ロヒンギャ擁護を表明しないことで、モラルと政治的な信用を失いつつあると厳しいコメントを発表した。

 ネット上では同氏に授与されたノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を取り消すよう求める請願運動が行われ、これまでに36万筆の署名が集まっている。

 また、同じくノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)受賞者のパキスタン人活動家、マララ・ユスフザイ(Malala Yousafzai)さんも、ロヒンギャが置かれている窮状をめぐりスー・チー氏とミャンマー政府を非難した。