【9月22日 AFP】夜が更けたにもかかわらず、ニコレタ・モネア(Nicoleta Monea)さんとその子どもたちは眠れずにいた。ルーマニアに「明かりを届ける男」の取り組みにより、この日がモレアさん一家にとって電気なしで過ごす最後の夜となるからだ。

 ユリアン・アンへルータ(Iulian Angheluta)氏は5年にわたり、自身のプロジェクト「ルーマニアに明かりを(Light For Romania)」によって、欧州連合(EU)で2番目に貧しいルーマニアの貧困家庭に電力をもたらしてきた。

 モネアさんの家はルーマニアで最も貧しい地域の一つ、北部ボートシャニ(Botosani)県ゴルバネシュティ(Gorbanesti)村にある。

 貧困に加え、不動産の権利書さえないことなどから、ルーマニアでは約10万世帯が送電網から取り残され、太陽の動きに合わせた生活を送る羽目になっている。

 2012年から2016年の間に約9万9000世帯に電気が通るはずだった。しかしルーマニア経済省がAFPに明らかにしたところによると、必要とされる2億1000万ユーロ(約280億円)を政府が調達できなかっため、事業は未着手となっているという。

 そこでアンへルータ氏が見いだした解決策は、選ばれた住宅や学校に太陽光パネルを設置し、ルーマニア全土に明かりを広めるというものだった。

 これまでルーマニアの電気が通っていない地域で明かりといえば、小さな電池式のLED電球か、教会の聖像を照らすろうそくだった。

 太陽光パネルが設置されれば、冷蔵庫は難しいものの、携帯電話を充電し、明かりをつけておくのに十分な電力が得られるようになる。

 子どもが多い家庭を優先していると語るアンへルータ氏のプロジェクトでは、太陽光パネルの設置費用1000ユーロ(約13万円)の負担は免除され、再生可能エネルギーのため電気料金もかからないという。(c)AFP/Mihaela RODINA