■試練を乗り越え、未知の宇宙の姿を明らかに

 両機のうち、ボイジャー2号がまず1977年8月20日に、次いで1号が同年9月5日に打ち上げられた。複数の惑星が同方向に並ぶ、175年に1度のまれなタイミングを生かすとともに、惑星の重力を利用して燃料を最小限に抑える「スイングバイ」航法が用いられた。

 ボイジャーは予算難や1970年代当時の科学技術の限界など、スタートから多くの試練に見舞われた。プロジェクトに参加したある科学者が、ボイジャーを強い放射能から守る苦肉の策として、ケーブルに台所用のアルミホイルを巻き付けたという有名な逸話も残っている。

 それでも両機はこれまでに誰も目にしたことのない惑星の姿を次々と明らかにしていった。木星の表面に見える地球2個分の大きさを持つ巨大な渦「大赤斑(Great Red Spot)」も、そうした発見の一つだった。

 また土星の衛星タイタン(Titan)に太陽系で最も地球に似た大気が存在することや、海王星の衛星トリトン(Triton)で極めて低温の物質が噴出していることも判明した。

 軌道上にそれ以上惑星がなくなると、天文学者のカール・セーガン(Carl Sagan)氏から、カメラを反転させて同機を送り出した地球の写真を最後に撮影しておくべきだという声が上がった。これを受けてボイジャーは1990年のバレンタインデー、2月14日に、64億キロ離れた地点から撮影を実施。そこに映った地球は、広大な宇宙の中の1画素にも満たず、日光に浮かぶ微小なちりのように見えた。