■主流の美術館では非白人の作品は展示されてこなかった

 バスキアの友人でアーティストでもあるマイケル・ホルマン(Michael Holman)氏は、「白人だけが重要な芸術家とする考えには、人種差別と白人の特権が強く表れている」と主張する。

 カリフォルニア美術大学(California College of the Arts)の准教授ジョーダナ・ムーア・サジェッセ(Jordana Moore Saggese)氏は、同世代のアーティストと異なり、ニューヨークの美術館でバスキアの大規模な個展が開かれることはなかったと指摘。「歴史的に見ても、主流の美術館では非白人アーティストの作品が展示されてこなかった」と言う。

 サジェッセ氏はAFPの取材に対して、1970年代後半から80年代にかけて多くの批評家はミニマリズムを評価する一方で、80年代のアートは資本主義に迎合していると不満を募らせ、批評家の間では「アーティストは商業的にも批評的にも成功し得るかという問題をめぐって深刻な対立」が起きていたと語った。

 だがバスキアの魅力は、権威ある美術界をはるかに凌駕(りょうが)している。

 サジェッセ氏は、「ソーシャルメディアを通じて画像やアイデアがあっという間に拡散されるようになり、バスキアのようなアーティストは、芸術批評や美術史によって知名度が上がるという従来の仕組みにもはや頼らなくなった」と断言する。

 日本の衣料メーカー「ユニクロ(UNIQLO)」はMoMAと共同で、バスキア作品をモチーフにしたTシャツやスニーカー、腕時計、トートバッグを生産してきた。化粧品大手アーバン・ディケイ(Urban Decay)も、ライセンス契約したバスキア作品の画像を化粧品やアクセサリーに使用している。