【8月30日 AFP】ヒゲクジラ類は古代、肉食動物のライオンのように極めて鋭い歯を持っていたとする論文が30日、英国王立協会(Royal Society)の専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)に発表された。温和な大型哺乳類として知られる現代のヒゲクジラ類と同じく、かつて歯は餌をろ過して摂食するのに使われていたという定説を覆す発見だと、論文を発表したオーストラリアの研究チームは述べている。

 オーストラリアのミュージアム・ビクトリア(Museums Victoria)とモナシュ大学(Monash University)の古生物学者チームは、化石となったヒゲクジラ類、および世界中で標本を収集された現生するヒゲクジラ類を基に、3Dスキャナーによって歯型をデジタルで再現。すると、ミナミセミクジラやシロナガスクジラの祖先とされる古代のヒゲクジラ類は、現在のヒゲクジラ類と違い、非常に鋭い歯を持っていたことが分かったという。

 ミュージアム・ビクトリア脊椎動物古生物学部門の上級学芸員、エリック・フィッツジェラルド(Erich Fitzgerald)氏は、「古代のヒゲクジラ類には、獲物の肉をかみ切るという機能を備えた極めて鋭い歯があったことを示す初めての研究結果」だと主張。「多くの人々が信じてきた定説とは異なり、ヒゲクジラ類の歯は『こし器』として使われていたわけではなく、後になってヒゲクジラ類特有のろ過技術が発達していった。おそらく歯が消失してしまった後で」と説明している。

 ミュージアム・ビクトリアとモナシュ大学の主任研究員、デービッド・ホッキング(David Hocking)氏は、ヒゲクジラ類が進化して餌をこして食べるようになったときに「摂食に関する自らの生態を根底から覆した」ことを、今回の発表は物語っていると述べた。(c)AFP