【8月28日 AFP】気候変動が原因で、欧州の電力需要のピークが今世紀末までに冬から夏へと移行する可能性が高いとの研究結果が28日、発表された。この変化は、暑さをしのぐためにエアコンを使用する人が増えるのに伴うものだという。

 世界で3番目に大きな電力市場を構成する欧州地域では、地球温暖化により、今後数十年間で電力需要がどのように変化かを理解することは極めて重要になる。今回の研究では、地域の35か国を対象に、気温と電力需要の変化を分析、予測した。

 査読学術誌の米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表された論文によると「南欧と西欧では、1日の電力需要の平均ピーク負荷と総電力消費量に著しい増加が認められる」という。

 ポルトガルとスペインでは、電力需要3~7%増と予測された一方で、スウェーデンとノルウェーでは同2~6%の減少と、北欧に関しては「著しい減少」と予測された。

 論文によると、欧州全体の電力消費に対して予測される影響はほぼゼロだが、「電力の需要と消費のピークにおける顕著な分極化と季節的な変化によって重大な影響が波及する」という。

 そのため、発電所は多大な費用を投じてピーク発電能力を満たすための対応や措置を講じなければならなくなることが考えられる他、送電インフラを新設したり、エネルギー効率に関する新たな方針を打ち出す必要に迫られる可能性もあると、論文は指摘している。

 論文の主執筆者で、独ポツダム気候影響研究所(PIK)のレオニー・ウェンツ(Leonie Wenz)氏は「総電気使用量については、最高気温が約22度の日に最小となるとみられ、最高気温が上昇または下降すれば(電気使用量は)増加する」と説明した。

 驚異的な熱波による人への影響、さらには夏の暑さによる生産性の鈍化も考えられる。

 論文の共同執筆者で、米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)のマックス・アウフハマー(Max Auffhammer)氏は「屋外の気温が高いと、大気の質が悪化するとともに、人々がより大きなストレスを感じ、より攻撃的で暴力的になる。生産性は低下し、死亡率と犯罪率が上昇する。これについては今や十分な証拠が存在する」と指摘する。

 また「住宅部門から商業部門、農業部門から工業部門に至るまで、経済活動のあらゆるセクターにおいて熱ストレスの影響は出る」とも述べた。(c)AFP