【8月21日 AFP】スペイン東部カタルーニャ(Catalonia)自治州で先週、2件の襲撃事件が相次いで発生した。同国は長年テロと闘ってきたにもかかわらず、これらの襲撃を未然に防げなかった。観光地として人気のカタルーニャは、実はこうした襲撃に見舞われやすい場所でもあると、専門家らが警鐘を鳴らしている。

 事件はまず17日にバルセロナ(Barcelona)で、次いで翌18日未明に近隣の沿岸リゾート地カンブリルス(Cambrils)で発生。いずれも自動車が歩行者を次々にはね、14人が死亡、負傷者は120人に上った。後にイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が犯行声明を出した。

 スペインには、北部バスク(Basque)地方の分離独立を求めて暴力的な抗争を続けてきた非合法武装組織「バスク祖国と自由(ETA)」と、半世紀にわたって闘ってきた経験がある。この対立では、2011年にETAが停戦を宣言するまでの間に、800人以上が死亡している。

 2004年3月11日には、191人が犠牲となったいわゆる「列車同時爆破事件」が発生。イスラム過激派による襲撃事件としては欧州史上最悪の被害を出し、新たなテロの脅威は同国を震撼(しんかん)させた。政府はこの事件を受けて、治安体制の刷新を図った。

 昨年イスラム過激派のウェブサイトで「アンダルス(Al Andalus)」が標的として名指されて以降、脅威が高まっている。アンダルスは現スペイン領のうち、ムーア人と呼ばれるイスラム教徒らが1492年まで支配していた領域を指す。

 専門家らがとりわけ懸念するのは、スペイン最大のイスラム教徒のコミュニティーがあるカタルーニャ地方に、イスラム過激派が集中している点だ。

 スペイン・イスラム共同体同盟(UCIDE)によると、人口4700万人の同国におけるイスラム教徒数は190万人で全体の約4%を占め、大半がモロッコなど北アフリカ出身者だという。

 テロ対策を専門とするハビエル・サラゴサ(Javier Zaragoza)検察官は、スペイン国内のイスラム教徒はその多くが最近移住してきたばかりで、周縁化された移民の2世や3世が過激思想に走ることもままある欧州の他の地域に比べて、過激化のリスクはこれまで低かったとみている。