【8月24日 CNS】中国の夏休みも半分が過ぎ、子を持つ親たちは会うとほぼ挨拶のように「お宅のお子さん、今年の夏休みはどのくらいかかった?」と尋ね合う。ツアーやら夏合宿やら、夏休みの習いごとやらでお金が湯水のごとく減っていく。親たちは「早く学校が始まってほしい」と内心は思っているという。

 上海(Shanghai)の朱さんは最近、長女のイギリス夏合宿から帰ってきたばかり。合宿費用は14日間で2万2000元(約36万円)。さらに、朱さんと次女のホテル代やそのほかの費用を含めると14万元(約229万円)は超えるという。40年の歴史を持つ伝統的なイギリス文化を体験できるという合宿で、英語教室の他に、野外活動、イギリス王室のマナーなどを学ぶことができる。合宿ではほかの子どもたちとひとつ屋根の下で生活する。最初は慣れない様子だった娘も、最後には慣れてきた様子だったという。

 朱さんは、このように実際に困難を乗り越える心の訓練ができたことはよかったと話す。それに、違う国の同じ年の子どもたちと知り合えたこと、王室のマナーを習うことができたことで、静かに食事をすることやトイレをきれいに使うといった細かいことも、娘は深く感化されたのではないかという。

 しかし、朱さんのように金銭面に余裕がある家庭ばかりではない。大多数の普通の家庭にとって、ますます増える夏休みや冬休みの出費は耐え難い重荷になりつつある。

 朱さんの娘が参加したこのキャンプは、「海外遊学(体験学習)」という聞こえのよい名目がついている。中国国内の旅行会社の企画の多くには、欧米の名門校の名前が踊る。

 例えば、アメリカへの体験学習は10日間で2万元(約33万円)、世話係つきになると5000元(約8万円相当)、加えてピアノ、水泳クラス、英語、数学オリンピック、作文訓練費など、親のひと月の給料を軽く超えてしまう。

 中国が裕福になってきたことで、海外への体験学習は年々増えてきているが、国内で夏休みを過ごす子どもたちにも、同じようにお金がかかる。夏休み中に子どもにかかるお金について親を対象に行ったある調査によると、52%が5000~1万元(約8万1800~16万3000円)と答えた。次いで多かったのが1万~2万元(約16万3000~32万7000円)で25%、3万元(約49万円)以上が13%、2万~3万元(32万7000~49万1000円)が9%、となった。

 国内で夏休みを過ごす子供たちのために開かれる教室は、スポーツや芸術などといった自分の興味に応じた教室や、英語、数学といった補習教室がある。また、普段から続けている水泳、バドミントン、バスケットボール、卓球、テニス、ダンス、絵画、ピアノといった習いごとの夏期教室もある。

 北京(Beijing)の梁さんの子供は国語、数学、英語、テコンドー、バドミントン、絵画、ピアノ、バイオリンの夏期教室に申し込んだ。朝から晩までびっしりのスケジュールである。梁さんは、「私も働いているので、子供が1人で家にいても面倒を見られない。お手伝いさんを呼んだとしても、同じように5000~6000元(約8万1800~9万8300円)はかかってしまう。習いごとをしていれば、少なくとも子どもの居場所は確保できるし、おまけにためになる」と話す。

 しかし「子どもの夏休みの過ごし方」について、20年前なら問題にすら上がらなかった。子どもたちは家でアイス片手に『西遊記』を観たり、外ではしゃぎまわったりしていた。しかし現在では、外ではしゃぎ回る子どもの姿を見ることはほとんどない。

 梁さん自身も、「夏休みになると、おばあちゃんの家に遊びに行ったり、家でテレビを観たりゲームをしたりして、夏休みの最終日に焦って宿題をしていた。学校が始まると、『早く冬休みが来ないかなあ』と思っていた」。しかし、彼女の娘はよく「いつ夏休みが終わるのかなあ。はやく学校が始まらないかなあ」と言っているという。

 子どもからすれば両親の愛情は、「お金をいくら使ったか」ではなく、「時間をいくら使ったか」が重要なのだ。なのに実際はどうだろう。親は子どもに最高の物質的生活を提供するが、子どもと一緒にいる時間を割いてはいない。

 勉強をすることは悪いことではないが、本当に有意義な夏休みというのは、お金で決まるものではない。子どもたち自身が好きなことを選択して、それに時間を費やすことだ。

 親が子どもの夏休みのスケジュールを勝手に埋めてしまう前に、子どもに「どんな夏休みを過ごしたい?」と一度聞いてみてみるべきなのではないだろうか。(c)CNS/JCM/AFPBB News