【8月27日 AFP】ドイツの首都ベルリン(Berlin)に、ネオナチが描いたスワスティカ(かぎ十字)などの落書きを「愛とユーモア」によって包括的社会のカラフルなシンボルに変えようとしているストリートアーティスト集団がいる。

 ドイツ当局が反移民プロパガンダの広がりといった極右活動の急激な増加を報告している中、そうした動きに対抗する「ペイントバック(Paintback)」という運動を行っている。

 グループの創始者イボ・オマリ(Ibo Omari)氏(37)は「私たちはストリートアーティストとして『(極右主義者たちに)君たちはグラフィティを悪用している』というメッセージを送りたかった。グラフィティは人種差別主義とは全く関係ない。グラフィティとは、鮮やかな色彩で多様なバックグラウンドを表現するものだ」と語った。

 ストリートアーティスト向けの画材店を営むオマリ氏は、ブレイクダンスやストリートアート、ヒップホップDJやスケートボードなどを通じてドイツ人と移民の若者同士をつなぐ組織「カルチュラル・エアーズ(Cultural Heirs)」を運営している。

 ラップ・クラシックのアルバムカバーが壁に飾られた部屋にあるペイントバックの本部では10代のメンバーが、ネオナチが少数民族を脅すために使っているかぎ十字を新しいデザインに変える練習をしている。フクロウ、蚊、舌を突き出したウサギ、ルービックキューブ、キスをする男性カップル、窓辺のネコ──ナチス・ドイツ(Nazi)のシンボルを変身させるための想像力は限りない。

 17歳のメンバー、クレメンス・ライヒェルト(Klemens Reichelt)さんは「アイデアを思いつくのは難しいことではないよ」と話す。「かぎ十字はベルリンにふさわしくないと思っているから、この活動が好きなんだ。ベルリンは世界に開かれた街で、僕はそのことを守りたい」

 オマリ氏と大人のボランティア数人は街角でかぎ十字を発見すると、若者たちが考えたモチーフを使って「美化」を行う。

 このプロジェクトが始まったのは、近所の住民がオマリ氏の店にペンキを探しに来たことがきっかけだった。「彼はグラフィティアーティストのようには見えなかったから、どうしてペンキが欲しいのか尋ねたら、子どもたちの公園にスプレーで描かれたかぎ十字を隠したいからと答えたんだ。そんなことをする人が、それもシェーネベルク(Schoeneberg)にいると知って僕たちは大きなショックを受けた」。シェーネベルクは中流階級のドイツ人、トルコ人、アラブ人家族が多く暮らし、過去1世紀に及ぶ同性愛者向けのにぎやかなかいわいもある地区だ。