【8月18日 AFP】チリ南部で13年前に化石が発掘された、体の輪郭が肉食恐竜ベロキラプトルによく似た風変わりな草食恐竜は、恐竜の進化の「ミッシングリンク(失われた環)」だとする研究結果が16日、発表された。

 英国王立協会(Royal Society)の専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)に掲載された論文によると、カンガルーほどの大きさのこの恐竜「チレサウルス」の分類を再評価した今回の研究は、今年発表された新説を補強するものだという。この新説は、長年支持されている恐竜の分類法を書き換える可能性があるとされる。

 論文の共同執筆者で、英古生物学会(Palaeontographical Society)の会長を務める英自然史博物館(Natural History Museum)の研究者、ポール・バレット(Paul Barrett)氏は「チレサウルスが、恐竜の2つの大分類間にある進化の隙間を埋める助けになるのは間違いない」と話す。

 チレサウルスは2015年に初めて世界に公表されたが、その際は草食傾向にもかかわらず、肉食恐竜が属する獣脚類の仲間として扱われた。獣脚類は俊足のベロキラプトルや究極の肉食動物ティラノサウルス・レックス(T・レックス、Tyrannosaurus rex)なども含まれる肉食恐竜の亜目だ。

 だが専門家らは当時、この分類に違和感があることを認めていた。専門家の一人は、チレサウルスを「これまでに発見された中で最も奇妙な恐竜」と表現した。

 チレサウルスの特徴のうち、直立の姿勢、力強い後肢、短い前肢などはすべて、獣脚類を連想させる。だが、骨盤の向きが獣脚類とは逆構造で鳥類に似ていることや、歯が植物のみを食べていたことを示す扁平(へんぺい)で木の葉状の形をしていることなどは、恐竜のもう一つの大分類である鳥盤類と共通の特徴を持っていることを示唆していた。

 よく知られた鳥盤類恐竜としてはトリケラトプスや、推定体重3トンで背中に大きな骨板が並び、脳がクルミ大のステゴサウルスなどが挙げられる。

 バレット氏は、AFPの取材に「チレサウルスは当初、獣脚類系統の初期の派生種のように見えたが、植物を食べるためのこれらすべての適応を獲得したとするのは疑わしく思われた」と語った。

 チレサウルスが生息していたのは約1億5000万年前で、少数の獣脚竜が肉食から離れたことが知られているよりもはるか前だとバレット氏は指摘する。