■偶然の一致「可能性は極めて低い」

「今回の研究は、不足していたのが酸素ではなく、豊富な、栄養に富んだ食料源だったことを示す初の物的証拠を提示している」と、ブロックス教授は話す。

 これで話は藻類に戻る。

 地表の融解とともに豊富な窒素を含む栄養物が大量に海へと流れ込み、光合成を行う藻類が爆発的に増加した。その際、はるかに小型の細菌類の犠牲を招いた。

 生態系内のエネルギー量を決めるのは、食物連鎖の底辺で、細菌類にとってかわった藻類は平均で約1000倍の大きさだ。この違いについてブロックス教授は、「大きさの比率ではネズミとゾウくらいの差がある。海洋生態系で重要となるのは大きさだけ」と指摘する。

 そして「食物網の基盤に、栄養価が高く高エネルギーの微粒子が大量に得られた。これによって生態系全体が複雑で大型の動物へと向かうこととなった」と説明した。

 研究チームは、このような移行が起きた証拠を、オーストラリア中部に広がる砂漠地帯の地下深くから採取した岩石サンプルで発見した。サンプルの岩石は、約5000万年間続いた地球の氷結状態の直後の年代のものだった。

 研究では、クロマトグラフィー法(化学成分の析出)と分光法(質量の測定)を用いて、高次の生命体と細菌類の個体数を反映する上でそれぞれの指標となる分子2種類の経時変化を調べ、比較した。

 その結果は、複合生物の指標となる分子の数が100倍~1000倍に増加するほどの劇的な変化を示していた。

「藻類の増加と動物の出現は、発生時期が互いに非常に近いため、それが偶然の一致である可能性は非常に低い」と、ブロックス教授は話している。(c)AFP/Marlowe HOOD