【8月13日 AFP】第16回世界陸上ロンドン大会(16th IAAF World Championships in Athletics London)は12日、男子4×100メートルリレー決勝が行われ、ジャマイカのアンカーを務めたウサイン・ボルト(Usain Bolt)が走り切ることができず、輝かしいキャリアの最後は途中棄権という衝撃的な幕切れとなった。

 3位でバトンを受け取ったボルトは、最後の直線を半分ほど走ったところで左の太ももを押さえながら体を引きつらせ、最後は転がり込むようにして前に倒れた。この光景に、ロンドン・スタジアム(London Stadium)に詰めかけた満員の6万人の観客は息を呑んだ。

 レースは英国が37秒47で優勝。ジャスティン・ガトリン(Justin Gatlin)擁する米国が0秒05差の2位に入り、日本が38秒04で銅メダルを獲得する健闘を見せた。

 ジャマイカのチームドクターはボルトの状態について、「左ハムストリングのけいれん」だと話している。

 2走のジュリアン・フォルテ(Julian Forte)は、「本人から詳しいことは聞けなかったけど、見た限りでは、引きつったか、けいれんを起こしたみたいだった。ずっと謝っていたけど、僕らはその必要はないと答えた。けがもこのスポーツの一部だ」と話した。

 110メートルハードルの新王者で、1走を務めたオマー・マクリオド(Omar McLeod)は、「誰もがボルトをうらやみ、彼のレースに熱くさせられた。(ボルトのけがは)事故のようなもの。ウサイン・ボルトの名前は永遠に生き続ける」と話した。

 5日の100メートルではガトリン、そしてこの日米国のアンカーを務めたクリスチャン・コールマン(Christian Coleman)に敗れて大会3連覇を逃したボルトだが、リレーのメンバーにマクリオド、フォルテ、そして2011年大会王者のヨハン・ブレイク(Yohan Blake)というそうそうたる顔ぶれが並んだことで、ボルトの公式戦最後のレースへの期待は高まっていた。

 そして迎えた決勝では、3走まで英国、米国、そして大会5連覇を目指すジャマイカが競り合い、並ぶようにしてアンカーにバトンタッチしたが、その後に待っていたのはボルトが叫び声をあげながら痛みに跳びはね、日本が3位に食い込むという劇的な結末だった。

 この結果、100メートルと200メートルの世界記録保持者であるボルトは、米国のアリソン・フェリックス(Allyson Felix)より1個少ない、金メダル8個を含む14個の世界選手権のメダルでキャリアを終えることになった。

 英国の優勝を喜ぶ大歓声が響く中、医師に状態の確認を受けたボルトは、車いすに乗ってトラックを後にするのを拒否し、最後は立ち上がって足を引きずりながらチームメートとともにフィニッシュラインを越えると、治療のためスタジアム内部へ消えていった。

 相次ぐドーピングの発覚や統括団体の中枢にまで及ぶ汚職スキャンダルなど、陸上界がかつてない危機に瀕する中でトラックに光をもたらした選手の最後としては、悲しい終わりだった。(c)AFP/Luke PHILLIPS