【8月13日 AFP】脳卒中で半身がまひし、ほとんど話すこともできないティン・フライン(Tin Hlaing)さん(75)は、実の子どもたちによって道端に捨てられた。

 そのまま道端に横たわっていたティン・フラインさんは、気の毒に思った知らぬ人に、最大都市ヤンゴン(Yangon)の郊外にある老人ホーム「トワイライト・ビラ(Twilight Villa)」に連れて行ってもらったことで救われた。

 ティン・フラインさんの身に起きた「うば捨て」のような出来事は、急速に進む高齢化への対応に苦慮している貧困国ミャンマーにおいて、まれな例ではなくなってきている。同国では高齢化の問題が、既に無力化している医療福祉制度に重くのしかかっている。

 トワイライト・ビラのキン・マー・マー(Khin Ma Ma)氏によると、入居者の多くはティン・フラインさんのように、家族に見捨てられた後、当惑し病気を患った状態でやって来るという。

 同氏はAFPに対し「彼女(ティン・フラインさん)はひどい状態でした――混乱し脱水状態で、そして何よりひどく怒っていた」「話ができる状態ではなかった」と語った。

 2010年に設立されたトワイライト・ビラには現在70歳以上の高齢者120人が入居、100人以上が入居待ちとなっている。

 施設内にはわずか数センチ間隔でベッドがひしめき合うように並べられ、静かに宙を見つめたり、毛布の下でうずくまったりしている高齢者たちでいっぱいだ。

 あるベッドの上では、弱々しい高齢の女性が、ほほ笑んだ表情のプラスチック製の人形の耳に向かってささやいている。家族が暮らす家の裏庭にある小屋からこの老人ホームに移ってきて以来、この人形が彼女の唯一の話し相手となっている。

 キン・マー・マー氏は、ごみ捨て場のそばに車から投げ捨てられた別の女性のことを回想する。その女性は発見された時、体は切り傷やネズミにかまれた痕だらけだった。女性はこの老人ホームにたどり着いたものの、わずか数か月後に亡くなったという。

 キン・マー・マー氏は「ここに来る高齢者のポケットからはときどき名前と年齢が書かれた小さなメモが出てくることがあります。(手掛かりは)それだけです。そうした高齢者に質問しても、返答することさえできません」「文明社会において高齢者がこのような扱いを受けることがあってはならないし、彼らを見捨てた人物たちは起訴されるべきだ」と語った。