【8月11日 AFP】子ブタのゲノムを編集し、内在するウイルスによる感染の危険を取り除くことに成功したとの論文が10日、米科学誌サイエンス(Science)のウェブサイトに公開された。ブタから人への臓器移植の実現に道を開く画期的な研究成果だ。

 臓器移植の待機患者数は、米国だけでも約11万7000人に上り、毎日22人が移植日を待ち望みながら死亡しているという公式統計がある。今回の研究は、年々増え続ける待機者を大幅に減らし、多くの命を救うことにつながる可能性がある。

 ハーバード大学(Harvard University)の遺伝学者、ジョージ・チャーチ(George Church)氏とルーハン・ヤン(Luhan Yang)氏は、デンマークや中国の研究者の協力を得て、今回の研究を行った。

 研究チームは編集した胚細胞を、成長を助け改変過程で起きやすい破壊効果を克服しやすくする化学化合物の中に置き、標準的なクローン技術を使って、編集したDNAを代理母の卵細胞に注入した。これにより、ブタ内在性レトロウイルス(PERV)を保有しない子ブタ37匹が生まれたという。

 実際に人がブタから臓器提供を受けた場合にPERVに感染するかどうかは不明だが、実験ではペトリ皿に入れたウイルスがヒト細胞に感染し得ることが確認されている。

 既にブタの心臓弁や膵臓(すいぞう)のヒト移植例はあるが、科学者たちは人の臓器と同サイズに成長するブタ臓器全てのヒト移植を実現しようと長年研究してきた。とはいえ、異種移植のゴールはまだ遠い。ヒト免疫システムの反応や血液の毒性相互作用を回避するため、ブタの遺伝子をさらに編集する必要がある。(c)AFP