■「見捨てられたベルリン」

 長年ベルリンで暮らしているアイルランド出身のフェイヒーさんは、こういった廃虚をほぼ誰よりも熟知しており、心を込めて写真を撮影し、その細部について自身のブログや写真集で紹介している。どちらも「見捨てられたベルリン(Abandoned Berlin)」というタイトルが付けられている。

 人々が興味を示し始めたのは、1989年のベルリンの壁(Berlin Wall)崩壊後のことだった。壁の向こう側にあった広大な土地に、かつてのナチス・ドイツ(Nazi)の塹壕やソ連軍の兵舎、閉鎖された赤レンガ造りの工場、さらには乗り物や恐竜の像がそのままになった古い遊園地まで、無数の遺物が見つかったからだ。

 それから四半世紀、不動産ブームで都市の景観が塗り替えられる中、都市探検の人気も高まりをみせた。この流行は世界的なもので、グーグル(Google)で都市探検を意味する「urbex」を検索してみると、700万件以上ヒットする。

 彼らの間には、「写真以外は持ち帰るな、足跡以外は残すな」という暗黙のルールが存在する。

 こうした背筋がひやりとするような旅には、文明滅亡後の世界を垣間見るような醍醐味(だいごみ)があると都市探検家の多くは言う。ラトビアからの参加者の一人は、「自然による侵食」を目の当たりにするのは興味深いと語った。