【9月24日 AFP】荒れ果てた塹壕(ざんごう)や放置された兵舎、廃虚と化した病院──。ドイツの首都ベルリン(Berlin)には、忘れられた場所に赴き、冷戦(Cold War)時代の遺物を巡ってタイムスリップした感覚を味わおうというアーバンエクスプローラー、すなわち都市探検家がこぞって訪れる。

 ベテラン都市探検家のキアラン・フェイヒー(Ciaran Fahey)さんは、共産主義だったかつての東ベルリンにある古い小児病院を訪れた。雑草と落書きに覆われた構内を歩きながら、「すごい。こんなに大勢がやって来たのを見たのは初めてだ」と驚きを隠せない様子だ。

 この日は、地元ドイツに加え、ロシアやラトビアからスリルを求めてやって来た総勢24人が、廃虚の中で恐る恐る歩を進めていた。

 この通称「ゾンビ病院」は、1991年から放置されている。普段ここに時折姿を見せるのは、たまり場を求める若者やホームレスだけだ。

 他の「失われた場所」同様、この古い病院建物も危険とみなされているため表向きは立ち入り禁止となっている。それでも、訪問者らは当局の目を忍びつつ、金網塀の穴をくぐり抜けて中に入る。

 ベルリン市役所のエバ・ヘンケル(Eva Henkel)氏は、危険な不法侵入行為が繰り返されるこうした都市探検を警察は快く思っていないと苦言を呈する。

 しかし都市探検家にとっては、それは旅行パンフレットと同じくらい魅力が詰まっていて、彼らが手にするベルリンの観光地図にはこの病院の所在地がしっかりと記されている。