【8月10日 AFP】心と体の性別が一致しないトランスジェンダー(性別越境者)の米軍入隊禁止の復活は憲法違反だとして、米軍所属のトランスジェンダー女性5人が9日、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領とジェームズ・マティス(James Mattis)米国防長官、国防総省の高官らを米連邦裁判所に提訴した。

 男性から女性に性別を移行した原告5人はそれぞれ空軍、沿岸警備隊、陸軍に所属している。除隊を強制される恐れや退役給付金を受け取れない可能性があるなど、将来の不安に直面していると訴えている。

 バラク・オバマ(Barack Obama)前政権は昨年、トランスジェンダーの兵士が性自認を隠すことなく軍務に就くことを認めた。しかし、トランプ大統領は先月、ツイッター(Twitter)への3回の投稿で、オバマ政権下での方針を覆しトランスジェンダーの米軍入隊を再度禁止すると表明。事前に国防総省側とのすり合わせは全くと言っていいほど行われず、マティス国防長官は休暇中だった。慌てふためいた同省は一貫した対応を取るため調整に追われた。

 今回の訴訟は、全国レズビアン権利センター(NCLR)や同性愛者の擁護団体「GLAAD」が原告代理人となって提起した。「トランスジェンダーの人々を軍務から排除するトランプ氏の命令は、既に軍務全体で感じられる大きな悪意のうねりを生み出している」と、NCLRのシャノン・ミンター(Shannon Minter)法務部長は指摘している。

 米軍にフルタイムで所属する現役軍人130万人のうちトランスジェンダーの人数は少なく、推計1320~1万5000人といわれる。

 トランプ氏のツイートから2週間、ホワイトハウス(White House)はいまだ国防総省にトランスジェンダーの入隊禁止の実施手順について明確な指示を出していないため、現在はまだ入隊禁止措置は実施されていない。(c)AFP