【8月9日 AFP】ネパール議会の委員会は8日、同国の国際空港で働く入国管理局職員らが人身売買組織と共謀し、自国の女性たちを違法に湾岸諸国に移送しているとする報告書を発表した。女性たちは現地で搾取や虐待といった被害を受けていることが多いという。

 国際関係と労働者の人権の問題を担当している委員会は同報告書で、政府は国外で働く自国民の保護対策を怠り、人身売買が横行しているという疑惑を見て見ぬふりをしていると批判。また、湾岸諸国で結果的に不法労働に従事させられるネパール人労働者の60%以上が首都カトマンズ(Kathmandu)の空港を使用していると述べている。

 報告書はさらに、「(労働者らは)入管職員や航空会社職員、警備員、人身売買業者と共謀し、観光ビザを使ってトリブバン国際空港(Tribhuvan International Airport)経由で渡航している」ことを明らかにするとともに、インド、スリランカ、中国、アフリカ諸国を経由して向かうルートも存在すると指摘している。

 女性たちは湾岸諸国のデパートやホテルで好待遇の仕事があるとだまされ、たいていの場合は、現地でパスポートを取り上げられて個人宅のメイドとして働かせられることが多いという。

 政府の統計によると、国外で働く自国民からの送金は国内総生産(GDP)の3分の1近くを占めており、これが受け入れ国に対する政府の消極的な姿勢の要因ではないかと人権団体はみている。AFPの取材に応じたネパールの国家人権委員会(National Human Rights Commission)の広報担当者は、政府は人身売買の問題に気付かないふりをしていると批判した。

 政府の最新の統計によれば、ネパール移民の数は2008年にはおよそ20万人だったのに対し、2015年には50万人近くまで増加しており、毎年約2万人の女性が出国している。(c)AFP