【8月8日 AFP】2年前に腎臓移植手術を受けた米国のアリエス・メリット(Aries Merritt)は7日、第16回世界陸上ロンドン大会(16th IAAF World Championships in Athletics London)の男子110メートルハードル決勝でメダル獲得を果たせなかったものの、出場できただけで優勝したような気持ちだと語った。

 リオデジャネイロ五輪の同種目で金メダルに輝いたオマー・マクリオド(Omar McLeod、ジャマイカ)が優勝するなか、32歳のメリットは5位でメダルを逃した。ドーピング問題でロシアの資格停止処分が継続されているため、個人資格で出場している前回王者のセルゲイ・シュベンコフ(Sergey Shubenkov)が銀メダル、ハンガリーのバラージュ・バーイ(Balazs Baji)が銅メダルを獲得している。

 2012年のロンドン五輪で同種目を制したときと同じ会場となったロンドン・スタジアム(London Stadium)で、ゴールまでハードルが残り2つとなった段階ではメダルに手が届く位置につけていたメリットだが、惜しくも逃してしまったことを気にするそぶりをみせず、「まるで勝った気分だ」とコメントした。

「走れるかどうかも分からなかった。決勝に残れただけでありがたい。(昨年の国内選考会では4位に終わり、惜しくもリオ五輪の米国代表を逃したことで)1年ぶりとなった主要大会で完走できたし、良いパフォーマンスも残せた」

 同スタジアムで先月行われたダイヤモンドリーグ(IAAF Diamond League 2017)第9戦のロンドン大会で同種目を制し、その勢いに乗って今大会に臨んでいるメリットは、2013年に先天性の腎臓疾患である巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)と診断され、2015年の第15回世界陸上北京大会(15th IAAF World Championships in Athletics Beijing)で銅メダルを手にしてからわずか数日後、姉のラトーヤ(LaToya)さんから腎臓を移植する手術を受けた。

 当時妊娠していたラトーヤさんは、自分の腎臓を提供するため一時は中絶も考えたものの、メリットが状態が改善されたため、無事に出産を終えた。メリットは「姉と母もスタジアムにいてくれて特別な夜になった。ラトーヤがいなければ、自分は再び走ることはできなかった。もちろん、彼女たちの前でメダルを取れれば最高だったけど、まあ、運がなかったね」とコメントした。

「王者として残念な結果に終わったのは自分だけじゃない。(男子100メートルで)ウサイン・ボルト(Usain Bolt、ジャマイカ)も銅メダルだったし、(女子100メートルの)エレーン・トンプソン(Elaine Thompson、ジャマイカ)はメダルにも届かなかった」

「今大会ではたくさんの種目で意外な結果になっている。そのおかげで大勢のニューフェースが台頭し、世代交代が行われていく。それがスポーツの良いところだ」 (c)AFP/Pirate IRWIN