【8月21日 東方新報】中国大陸でも、電話による振り込め詐欺事件が激増している。昨年に発生した件数は60万件以上、日本の約43倍に相当する数字だ。

 中国公安部によると、昨年中国で発生した電話詐欺の年間損失被害は222億元(日本円約3700億)にのぼり、被害額は日本の約7倍以上に相当する。しかもその手口が日本で横行する「振り込め詐欺」に似ている事から、日本の詐欺集団も何らかの関わりがあると見て日本の警察庁と中国側で更に警戒を強めている。

 典型的な手法は、詐欺グループが電話先の子供を名乗り「仕事のミスで会社から巨額の損失補てんを請求された」「恋人の妊娠が発覚し金が要る」など、金銭トラブルに遭遇したといった内容の手口が多い。航空会社職員を装い、「手配した航空券がキャンセルされたので再度予約して下さい」といったものもある。

 昨年8月には、被害者が心労のあまり亡くなるという、痛ましいケースもあった。中国・山東省(Shandong)の学生、徐玉玉(Xu Yuyu)さんが中国政府教育部(日本の文部科学省に相当)を名乗る者から、「奨学金をもらいたければまず申請の手続きが必要だから、手数料を振り込むように」と騙され、学費として貯めておいたお金をだまし取られた。徐さんは心労のあまり倒れ、病院へ運ばれたが助からず、18歳という若さで命まで落としてしまった。この事件では、福建省に詐欺グループの拠点があったことがわかっている。

 また、昨年11月中旬には、福岡県筑紫野市のマンションに「怪しい外国人が出入りしている」と警察に110番通報が入り、このマンションの一室で台湾人による電話詐欺集団30人が摘発された。部屋からは、多くの携帯電話や中国語で書かれた大量の詐欺マニュアルなどの資料も見つかっている。警察の調べによると、容疑者らはこの部屋から中国大陸に国際電話をかけて詐欺行為をしたことを認めており、押収した携帯電話にも大陸の電話番号の履歴が残っていた。

 電話を使った詐欺グループの拠点は、日本に留まらずスペイン、マレーシア、ケニアといった国でも摘発されており、各国警察による捜査でも、電話詐欺の対象が主に中国人を狙ったものが多いことから、中国公安当局もいよいよ本格的に詐欺グループに対して厳しい監視体制をとる構えにいたった。

 この種の電話詐欺の起源は90年代に台湾から始まったものとされる。後に台湾当局の警察が犯罪集団を壊滅させた後、2000年ごろからその台湾式が中国大陸へ「輸入」されたものと考えられており、福建省(Fujian)がその最初の拠点場所だとされている。

 しかし、意外と知られていないのは、福建省で電話詐欺を行っているのは何も中国人と限った訳ではない。日本の電話詐欺集団も福建に潜伏しているという情報もあり、こうした集団も中国大陸から日本人に対して電話詐欺行為をしていると見られている。つい最近も、福建省で日本人35人が「振り込め詐欺」の容疑で現地公安局に拘束されたばかりだ。

 今月5日には、中国が初めてオセアニアで多人数の電信詐欺容疑者を警察間の国際的な協力で摘発した事件として、吉林省の警察が77人にも上る犯罪集団をフィジー共和国から中国国内まで護送している。(c)東方新報/AFPBB News