【8月4日 AFPBB News】会場に一歩足を踏み入れると、あたりは静寂に包まれる。外部の音を遮断するヘッドセットを装着し、聴覚障害のある案内人に、「音のない世界」へと導かれていく──。無音の世界での対話を体験するイベント「ダイアログ・イン・サイレンス(Dialogue in Silence)」が20日まで、東京・新宿の複合施設「ニュウマン(NEWoMan)」のイベントホールで開かれている。

 1グループ約12人の参加者が約90分間、表情や身振りを駆使しながら会場内の7つの部屋を巡る。言葉を超えたコミュニケーションを通して、参加者の間で次第に笑みがこぼれる。「温かさみたいなものがあった。言葉に頼らないコミュニケーションには大変なこともあるけど、一生懸命伝えよう受け取ろうとする分、分かり合えた感じがした」と参加者の仲村佳奈子(Kanako Nakamura)さん(28)。

 単なる障害の「疑似体験」ではなく、あくまでも「エンターテインメント」性を重視した。「人が違う世界に興味を持つのは、楽しい共有体験があってこそ」とイベントを主催するダイアローグ・ジャパン・ソサエティ(Dialogue Japan Society)総合プロデューサーの志村真介(Shinsuke Shimura)氏はコンセプトを語る。「SNSなどの普及により自分と共通点がある人と集団を形成しやすいなか、自分と異なる人たちと対等に遭遇することは互いが成長できるチャンス」

 志村氏は、プロジェクトが、2020年に東京五輪・パラリンピックを控えた日本で「社会変革を促進する触媒」になればと願う。「今の日本人はまだ一歩下がったり、伏し目がちになったりしている。そこには『言葉の壁』がある。ここでの経験を通して、表情や身振り手振りでコミュニケーションが取れるという実感を得て、ダイバーシティーな社会になれば」

 同イベントは、1998年にドイツで初開催され、すでにフランス、イスラエル、中国などで、100万人以上が体験。チケットはすでに完売状態で、20日間で約4000人の来場を見込んでいる。(c)AFPBB News