■苦闘して生存

 加ロイヤル・ティレル古生物学博物館(Royal Tyrrell Museum of Palaeontology)などの研究チームが化石の皮膚を調査した結果、この草食恐竜は体中が装甲で覆われ、まるで歩く戦車のようだったにもかかわらず、肉食恐竜の多大な脅威に直面していた可能性が高いことが明らかになった。

 それは、ノドサウルスが「カウンターシェーディング」と言われる、外敵の目をくらます術を用いていたからだ。このカモフラージュ術は、現代の動物の多くも使っている。

 研究チームは、この新属新種の恐竜の体色パターンを明らかにするために、うろこに残る有機化合物の化学分析を行った。その結果、表皮は赤褐色の有色素を持ち、全身がカウンターシェーディングになっていたことが分かった。これによって、背の高い肉食恐竜が近づいてきた時に、ノドサウルスは周囲の環境に溶け込みやすかったのではないかと、研究チームは指摘している。

 だが、シカ、シマウマ、アルマジロなど、カウンターシェーディングを使う現代の動物の大半は、捕食動物としてははるかに小型で、攻撃に対して弱い。ということは、このノドサウルスは生存を懸けて本当に苦闘していたことがうかがえる。

 論文の主執筆者で、ロイヤル・ティレル博物館のケイレブ・ブラウン(Caleb Brown)氏は「非常に大型で、重厚な装甲をまとった恐竜に対する強力な捕食圧は、白亜紀の肉食恐竜たちがさぞ危険だったに違いないことを浮き彫りにしている」と述べている。

 研究チームは、この恐竜が最後の食事に何を食べたかを明らかにするために、化石として残る消化管内容物を調べるなど、恐竜の生態に関する手がかりを見つけるための研究を続けている。

 この恐竜の化石は現在、ロイヤル・ティレル博物館内に展示されている。(c)AFP