【8月13日 AFP】チュニジアの首都チュニス(Tunis)に「独裁者」を意味する「ディクタター(Le Dictateur)」という名のレストランがある。メニューをのぞくと「焼けた自由」と名付けられたステーキなどが目を引く。

 アラブの春(Arab Spring)の引き金となったチュニジアのいわゆるジャスミン革命から6年。同店は首都郊外の高級地区シテアンナサル(Cite Ennasr)の飲食業界でしのぎを削っている。

「レストランを有名にするには、おいしい料理だけでは足りない。だから、注目を集めるような名前とコンセプトにしようと思いついた」と30代のオーナー、セリフ・ベン・ハモウダ(Seif Ben Hammouda)さんは話す。「(チュニジアでは)独裁制について話すのは何十年もタブーだった。自由と民主主義をもたらす努力が続いている今でも、非常に重要な問題だ」

 レンガ造りの店内は刑務所のような雰囲気だ。鉄格子が設置された壁には、あらゆる独裁者の肖像画が飾られている。アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)に変装したチャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)、壁のスペースを奪い合うかのように並ぶ旧ソ連の独裁者ヨシフ・スターリン(Joseph Stalin)とメラニア・トランプ(Melania Trump)米大統領夫人。ロシア大統領のウラジーミル・プーチン(Melania Trump)氏の肖像も、壁の上から店内を見下ろしている。

 重々しい雰囲気を醸し出しているのは内装だけではない。メニューには「焼けた自由」「アナーキー」「反対派」「クーデター」といった名前の料理もある。「ジャスミン革命の大きな成果である表現の自由を、最大限に生かしたかったんだ」とハモウダさんは語った。(c)AFP/Kaouther Larbi