【7月28日 AFP】米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)、ボルティモア・レイヴンズ(Baltimore Ravens)のジョン・アーシャル(John Urschel)が27日、26歳の若さで現役引退を表明した。NFL選手の死後に提供された脳の99%に変性疾患の徴候がみられたとの研究結果が2日前に発表されたばかりだった。

 数学の学士号と修士号を持ち、今後は米マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を目指す予定のアーシャルは、引退の理由については公表せず、レイヴンズがニュースを発表した後に出した声明で、「簡単な決断ではなかったが、自分にとっては正しいものだったと信じている。そのこと以外はここで話すつもりはない。プライバシーを尊重してもらえればありがたい」と述べた。

 カナダ出身のアーシャルは今年1月、ケーブルテレビ局HBOに対し、ヘルメット同士の衝突で脳振とうに見舞われ、意識を失った経験がすでに心に影響を及ぼしているとして、「計算能力が衰えていると思う。アメフトができるようになるまで3週間を要した。はっきりと視界が戻ってくるまでは、さらに時間がかかった」と話していた。

 しかしアーシャルはこの日、健康問題とは無関係であるとして、「MITのフルタイムの学生として、数学の博士号取得へ向けて学ぶのを楽しみにしている。この秋だけに用意されている授業を受けることと、婚約者と一緒に過ごしながら父親になるという新たな挑戦に向けての準備も楽しみだ。僕たちは12月に初めての子どもが生まれる」と明かした。

 レイヴンズ一筋で過ごした現役生活の3シーズンで、アーシャルは先発13試合を含め合計40試合に出場した。

 米国医師会雑誌(JAMA)が25日に発表した論文によると、研究のために死後に脳を提供した元NFL選手111人のうち、110人の脳に慢性外傷性脳症(CTE)の顕著な徴候が認められたという。

 CTEは、記憶障害、めまい、うつ病、認知症などの症状を引き起こす。こうした症状は、選手が引退してから何年も経った後に現れる可能性がある。

 NFLに対してはここ数年、脳振とうや頭部外傷の問題に関連した監視の目がますます厳しくなっており、2015年には神経疾患に見舞われた元選手数千人による訴訟でNFL側と10億ドル(約1120億円)の和解が成立している。(c)AFP