■堆積物の分布がカギ

 ミリケン准教授は「水を豊富に含む堆積物の分布がカギを握っている」としながら、「こうした堆積物は月の表面に散在している。これにより、アポロのサンプルで見つかった水は、その場だけのものではないことが分かる」と指摘した。

 また「周回観測機のデータを調べることで、アポロや(旧ソ連の)ルナ(Luna)計画などの探査ミッションではサンプル採取が一度も行われなかった月面の広大な火山砕屑堆積物を調査できる」と説明し、「堆積物のほぼすべてが水の痕跡を示しているという事実は、アポロのサンプルは特異的なものではなく、月の内部の大部分に水が多く含まれる可能性があることを示唆している」とも述べている。

 月をめぐっては、太陽系の歴史の初期に火星くらいの大きさの天体が地球に衝突し、その際に飛び散った破片から形成されたと考えられている。しかし、水の形成に必要な水素が、この衝突で発生した熱を切り抜けることは不可能だと科学者らは推測していた。それでも「月の内部に水が存在する証拠が増えていることは、水が何らかの方法でこれを切り抜けたか、もしくは衝突直後の、月がまだ完全には固まっていない時期に、小惑星や彗星(すいせい)によって水が持ち込まれたことを示唆している」と、リ氏は話す。

 なお、火山ガラスに含まれる水はごく微量にすぎないが、堆積物は広大であり、この水を抽出できる可能性もある。

 このことについてリ氏は、「月の極にある影の領域に水氷が存在することが他の研究で示唆されているが、火山砕屑堆積物はそれよりアクセスしやすいと思われる」と述べ、「未来の月探査に訪れる人々が地球から大量の水を持ち込まなくても済むようになるのであれば、それは大きな前進となるものであり、今回の結果は新たな代替案の一つを示唆している」と続けた。(c)AFP/Laurence COUSTAL