【8月6日 AFP】パキスタンは長い間、腎臓の違法取引において国際的な中心地とされているが、医療および地元当局は、効果のない政策の実施方針と取り締まろうとする政治的意志の欠如に阻まれ、こうした違法行為に対抗できないでいると訴えている。

 臓器提供は、自発的で強迫や金銭の取り交わしがない限り合法だ。イスラム教徒が国民の大半を占めるパキスタンの聖職者はそうした臓器提供はイスラム教に沿ったものと判断しているが、認識不足や、イスラム教徒にとってタブーとする考えが浸透していることから、臓器を自発的に提供する人々は不足している。

 臓器供給が限られているために、パキスタンでは富裕層が、臓器取引にかかわる犯罪組織の手を借りて何百万人もの貧困層の人々を日常的に食い物にしていると言われている。また腎臓が安く買えるため、主に湾岸諸国やアフリカ、英国など海外からの買い手も少なくない。多くの国ではこうした臓器の売買は闇取引に限られるが、パキスタンでは平然と行われている。

 AFP記者が首都イスラマバード(Islamabad)にある高所得者向けの総合病院の受付ロビーに入るやいなや、職員が見つけてくれたいわゆる「エージェント」が、ドナーの紹介と腎臓移植のための政府許可の取得で、計2万3000ドル(約250万円)でどうかと持ちかけてきた。

 政府の人体臓器移植当局「HOTA」は、そうした臓器取引に対して無力だという。ドナーが同意したと主張すれば、自分たちにできることは何もないとHOTAの監視局員の医師は述べた。

 専門家は、横行する臓器をめぐる闇産業の根本原因に対処する必要があると指摘している。

 ラワルピンディ(Rawalpindi)にある国立ベナジル・ブット病院(Benazir Bhutto Hospital)の腎臓科長ムムターズ・アフメド(Mumtaz Ahmed)医師は、「この違法取引はこの国の金持ちとエリート層に利益を与えている」と語る。腎臓取引に関する政府の調査委員会の委員でもあるアフメド氏はまた、そのために議員らは罰則の執行に乗り気でないと、主張している。一方で、パキスタン連邦捜査局(FIA)は、臓器の違法取引をなくすために差別はしないと誓っている。