【7月21日 AFP】ハスの花が10年ぶりに満開になると聞いて、これを取材しない手はなかった。タイで神聖な花とされているハスが、池に何万輪も咲き誇る姿を見逃すわけにはいかない。

 私たちは重大ニュースがない時は常に特集記事のネタを探している。咲き乱れるタイの国花ほど壮観なビジュアルなど、あるだろうか?

 学名「ネルムボ・ヌキフェラ」というハスはアジア全域でみられる。国民の大半が仏教徒のタイでは「ブア・ルアン」と呼ばれている。仏教、ヒンズー教の両方で聖なる植物とされ、その花に座る多くの神の姿が描かれてきた。

 それらの宗教でこの花が純粋さや美しさの象徴とされてきたのは、その育ち方に理由があると思う。水生植物のハスは沼や池のよどんだ水の中から、まるで対照的に清々しく、汚れなく、ユリの花のように真っすぐに伸びる。

 ハスの花は象徴的に描かれる他にも、神殿の供物や飾りから料理までさまざまに使われてきた。だが、干ばつや汚染の影響で、カオ・サームローイヨート(Khao Sam Roi Yot)国立公園では、もう10年近く姿が見かけられていなかった。

 

(c)AFP/Roberto Schmidt

 

 記事にするにあたって私たちは最初に許可を取らなければならなかった。観光局に申請して許可を取ったが、たとえ許可があっても、公園管理局からはさほど協力は得られないだろうと観光局で言われた。

 公園に着いたのは夜明け前。美しい朝日で撮るためだった。日中の強い日差しでは被写体の色や質感がかき消されてしまうため、写真を撮るのは早朝か夕方が常にベストだ。

 朝6時ごろ、地元の村人たちと木製のカヌーに乗って湖へ繰り出した。周りを山に囲まれた湖は、愛らしかった。息をのむような美しさではなかったが、愛らしかった。

 

(c)AFP/Roberto Schmidt

 

 天気は私たちの努力に味方してくれそうになかったので、とにかく急いで仕事をする。水面に繰り出すとすぐに風が吹き始め、その強風のせいで、上空からの撮影用に飛ばしたドローン(小型無人機)は数分しか使えなかった。30分ほどでどうにか撮影し終えると、モンスーンの雨が落ちてきた。

 

(c)AFP/Roberto Schmidt

 

 静かで、美しく、平和な光景だった。自然界に存在するものの中で、早朝の光にこれほど映えるものはそうないと思えた。

 だが、ボートを動かすや否や、夢のような光景は暗転し始めた。風が勢いを増し、雲が空を覆い、陽の光が弱まったと思うともう、私たちはモンスーンの雨でびしょ濡れだった。

 身を隠せるところはほとんどなかったが、ガイドが機転を利かせて、背の高い草が生えた一角にボートを寄せたので私たちは幾分、土砂降りの雨と雷から守られた。

 岸に戻ると、あまり嬉しくなさそうな顔をした公園の管理職員たちが、私たちが何をしているのか確認しようと待ち構えていた。園長によれば、公園の状況は理想的ではない。職員たちは緑を再生しようと必死に栽植を行っているが、その努力は実を結んでいなかった。そして園長は、私たちの記事のように公園が取り上げられることによって、来訪者が急増し、公園再生の努力が台無しになることを恐れていた。

 タイでの物事は大抵、最初に見えるよりも、もう少し複雑だ。問題となっている湖の汚染は、近隣の村人たちによるものだ。だが、この件は政治的に微妙な問題で、公園管理局はそれについて話したがらなかった。

 

(c)AFP/Roberto Schmidt

 

 状況は実のところ少々、矛盾している。政府観光局は、観光客をもっと誘致するために湖を宣伝している。だが、公園管理局がもっと気にかけているのは環境保全だ。

 この湖のハスの花の記事は、タイ発の多くの記事の中でも象徴的だ。私たちは、写真が素晴らしい、良い記事がきっとできると思っていたが、現地へ行ってみて、物事というのは見えた通りではないということを悟った。いつでも一番良いのは自分で行ってみることだ。本物の景色にはかなわない。

この記事はAFPのカメラマン、ロベルト・シュミット(Roberto Schmidt)がピエール・セレリエ(Pierre Celerier)記者と共同執筆したものを、ヤナ・ドゥルギ(Yana Dlugy)記者が翻訳し、2017年7月11日に配信された英文記事を日本語に翻訳したものです。