【7月18日 AFP】米国で外来種と見なされている日本渡来の海藻「オゴノリ」が、地球温暖化などの影響で荒れ果てた脆弱(ぜいじゃく)な沿岸海域の回復に重要な役割を果たしていることが分かった。米国の研究者らが17日、米科学アカデミー紀要(PNAS)に調査結果を発表した。「外来種は悪」と決めつける見方に一石を投じる内容となっている。

 論文によると、北大西洋(North Atlantic)沿海の多くの干潟や河口では、温暖化や汚染、病気や過剰採取が原因で固有の藻類やカキ礁が「著しく減少」している。調査を行った米ノースカロライナ(North Carolina)州では、歴史上みられてきた水準に比べ藻類が約97%、カキ礁が90%、塩沼が12%失われているという。

 こうした干潟などには、日本から輸入されたマガキと一緒に入ってきたとみられる外来種のオゴノリが繁殖している。そこで、研究チームはこのオゴノリが生態系にどのような影響を及ぼしているかを調べることにした。

 オゴノリがさまざまな分布密度で生育している48か所の広いエリアを対象に、土砂の安定化や流出防止、高潮や洪水の抑止、生物多様性、食物生産、経済的に重要な海産物の生育場など、環境に対して果たしている機能に変化がないかを10か月にわたって調査。その結果、稚エビや稚ガニ、稚魚の生育環境の改善をはじめ、多くの面で生物多様性に貢献していることが判明した。

 オゴノリの繁殖と、土砂の流出防止で重要な役割を果たす堆積物の安定化との間には有意な関係を発見できなかったものの、論文の共同執筆者で米デューク大学(Duke University)環境大学院のブライアン・シリマン(Brian Silliman)准教授(保全生物学)は、全体としてプラスの働きがみられたと指摘。オゴノリは固有種や生態系を壊さないばかりか、役に立っている可能性があるとしている。

 こうした可能性が示されたのは今回の実証研究が初めてだという。

 論文の筆頭執筆者である米ノースカロライナ大学(University of North Caroline)のアーロン・ラムス(Aaron Ramus)氏は「沿岸生物の生息場が世界規模で減少するなかで、生息場が全くないよりは外来種もいる生息場があるほうがまだ良いということが分かった」と説明。「多くの外来生物は、思われているようなマイナスの影響を与えていない可能性が十分ある」との見方を示している。(c)AFP