■ファッションの奴隷たちの現実

 貧しいが台頭し始めたミャンマーは、大量縫製工場の新たな拠点としてめきめきと頭角を現しており、「H&M」や「プライマーク(Primark)」といった巨大ファッション企業のためにできるだけ早く安価な服を作り上げている。公式データによると昨年度、輸出高は2倍以上増加し、16億5000万ドル(約1870億円)に上った。また10月に米国の制裁措置が解除されたため、さらに急成長が見込まれる。

 ファッション業界は急激な経済成長を支えている一方で、アジアの最低賃金と言われ、法的にほとんど保護されていない労働者たちへは利益は浸透していないという批判もある。

 多国籍企業の監視機関「SOMO」による最新レポートは、「ミャンマーの縫製産業では労働者の権利を犯している重大なリスクがあり、緊急に対応する必要がある」と警告している。

 他のミャンマー人デザイナーではモー・ホム(Mo Hom)が、何世紀にもわたるミャンマーの伝統的な生地産業を、タイや中国からの安価な輸入服の流入から救おうと活動中だ。ヤンゴンにある彼女のブティックは、チン(Chin)州やシャン(Shan)州から調達したカラフルなコットンやシルクの生地で溢れている。それらは伝統的な木製の織機で何か月もかけて手織りされたものだ。多くは緑茶やイチゴなどの天然素材で絶妙な色合いに染められ、伝統的な民族柄やシルエットと組み合わせられている。

 2012年にミャンマーに戻るまでニューヨークでデザイナーとして修業し活躍していたホムは「地方の製造工場はもはや市場需要がなく、今や瀕死状態だ」と語る。「ほとんどの工場は操業停止している」(c)AFP/Caroline HENSHAW