【9月24日 AFP】厳格な礼儀作法を学ぶ「ヴィラ・ピエールフー(Institut Villa Pierrefeu)」は、スイス最後のフィニッシングスクール。フィニッシングスクールとは、主に厳格なマナーやエチケットを教える女性のための学校だ。

 受講者の一人であるエジプト国籍の女性ヘバさん(34)は、自らのテーブルマナーについて、これまでフランス式と英国式を混同していたと話す。ヘバさんは少しきまり悪そうに、今までは食事中にナイフを使わなくても皿の上に置いていたことを明らかにした。フランスの食事マナーではご法度だ。

 ヘバさんは夏季講習に参加するために14か国から集まった女性30人のうちの1人だ。講習は3週間と6週間のコースがあり、国際ビジネスの礼儀作法からフラワーアレンジメントまで幅広く学ぶ。

 学校は1972年から校長を務めているビビアン・ネリ(Viviane Neri)氏の母親が、その20年近く前に設立した。

 受講者らの出身国はさまざまだ。「当校には見るからに大統領の令嬢や王女といった女性たちもいますが、決して多くはありません」。ネリ氏の笑顔は、その非の打ちどころのない立ち居振る舞いを和らげていた。「中には、貯金をして、ここでの滞在費を捻出する人もいます。本当に一握りの人しか持ち得ない特別の知識を、ここで得られると分かっているのです」

 受講費は安くない。選ぶカリキュラムによるが、6週間のコースは壮麗な館での宿泊と試験込みで、3万スイスフラン(約340万円)。現在の受講者は、18~50歳のビジネスウーマンや医師、主婦などだ。待遇の平等を重んじるため苗字は明かさないのだという。

 モントルー(Montreux)の美しい町を見渡すヴィラ・ピエールフー学校は、半世紀前には、レマン湖(Lake Geneva)周辺の丘に点在したたくさんのフィニッシングスクールの内の一つだった。

 当時、裕福な上流家庭の少女や若い女性がマナーや品位を磨くためにこうしたスクールに入ることは、より一般的だった。英国のダイアナ元皇太子妃(Princess Diana)も、もう閉校してしまったこの地域のフィニッシングスクールの著名卒業生の1人だ。