【7月13日 AFP】インドの経済学者でノーベル賞受賞者のアマルティア・セン(Amartya Sen)氏を描いた今週末公開予定のドキュメンタリー映画をめぐり、インドの検閲当局が「牛」や「ヒンズー教のインド」などの単語を自主規制音(ピー音)で消さなければ認証しないとの判断を下したことが分かった。制作したスマン・ゴシュ(Suman Ghosh)監督が12日、明らかにした。

 問題とされたのは、セン氏の著作と同名の映画『議論好きなインド人(The Argumentative Indian)』。インド国内映画賞の受賞歴をもつゴシュ監督は11日、東部コルカタ(Kolkata)で検閲官にこの作品を見せた。3時間にわたる鑑賞後、検閲官らはヒンズー教で神聖な動物とされている「牛」のほか「ヒンズー教のインド」「グジャラート(Gujarat)」などの単語をピー音で消すよう、口頭でゴシュ監督に要求したという。

「映画作品の中で突然ピー音が鳴ったら、おかしいと思う」とゴシュ監督は地元ニュース専門局NDTVに語り、検閲当局の異議に「とてもショックを受けた」とした上で「だが、一切変更を加えるつもりはない」と述べた。

 セン氏も「この作品に関して議論が起きたことにものすごく驚いている」とコメント。NDTVに対し「検閲当局のおかげで、人々の関心を引く映画になった。その点には感謝している」と皮肉交じりに語っている。

 インドでは、映画の検閲をめぐって論争がたびたび起きている。2015年にはインド映画検定中央委員会(CBFC)がスパイ映画「007」シリーズ最新作『007 スペクター(SPECTRE)』について、インド人の観客にはふさわしくないとして主人公ジェームズ・ボンド(James Bond)の長いキスシーン2か所をカットさせている。(c)AFP