【7月13日 AFP】膵臓(すいぞう)がんを初期段階で正確に検出できる可能性のある血液検査法を開発したとの研究論文が12日、発表された。進行が早く致命的な疾患となることが多いため、膵臓がんの発症リスクが高い人々にとっては新たな希望をもたらす検査法だという。

 膵臓がんでは腫瘍が大きくなりすぎて治療を施せない状態になってから発見されるケースが大半で、患者の5人に4人は診断から1年以内に死亡する。

 米国では、膵臓がんと診断される患者が毎年5万3000人以上に上っており、がんによる死因の第4位となっている。

 米ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)アブラムソン・がんセンター(Abramson Cancer Center)などの研究チームは、進行した膵管腺がん患者の細胞株を幹細胞技術を用いて作製し、がんが進行する時間を巻き戻すことに成功した。

 研究チームはこの仕組みにより、腫瘍のさまざまな成長段階でヒトがん細胞の膵臓がんを感知する一組のバイオマーカー(生体指標)を発見した。バイオマーカーは血液に含まれる物質で、疾患を特定する指標となる。

 米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)に掲載された論文の要約によると「末期のヒトがん細胞を幹細胞状態へと遺伝子的に再プログラミングし、この再プログラム化した細胞をがんの初期段階に進行させることが可能になったことで、その過程で分泌される早期膵臓がんの血液バイオマーカーが明らかになった」という。

 論文の主執筆者で、ペンシルベニア大再生医療研究所(Institute for Regenerative Medicine)のケン・ザレット(Ken Zaret)所長は、血漿(けっしょう)中の「トロンボスポンジン2(THBS2)」として知られるバイオマーカーと、より後期の段階のバイオマーカーとして知られる「CA19-9」を組み合わせて用いることで「あらゆる段階の膵臓がんを一貫して正確に特定できた」と述べた。

「THBS2濃度とCA19-9の組み合わせについて特筆すべき点は、早期がんの検出精度が他のどの既知の方法よりも優れていたことだ」

 今回の血液検査は、安価な市販のタンパク質検出分析キットを用いて行うことができると、研究チームは指摘している。

 研究チームの広報担当者は取材に応じた電子メールで、今回の検査法については、信頼できるカットオフ値を定めるための研究をさらに行う必要ががあるものの、原理的には今すぐにでも実際に適用できると述べている。

 今回の血液検査の主要な対象層としては、膵臓がんの家族歴がある人、膵臓がんの遺伝的素因を持つ人、50歳以降に糖尿病を突然発症した人などが挙げられるだろう。(c)AFP/Kerry SHERIDAN