■ソウル・ファッションウィークで鮮烈デビュー

 初めのうち、ハンはデザイナーやファッション誌の編集者たちから避けられた。中には浅黒い肌のモデルは「悪運」を招くとあからさまに非難し、「浅黒い肌のモデルはいらない」「韓国人でないモデルとは、金髪に青い目を持つ白人モデルのことだ」と伝えたりした者もいたという。

 しかし少数のデザイナーたちはハンの独特でカリスマ的な外見に引かれ、昨年のデビュー後、ソウル・ファッションウィークでは、30以上ものショーに出演することとなった。初心者モデルにとっては異例の数だ。ハンのスリムな体格は「アジア人モデルと欧米人モデルの良い部分を兼ね備えている」とハンをメンズラインに起用した「カオス・フロム・アンダーマインド(Chaos From Undermind)」のデザイナー、チェ・ヨンチェ(Cho Young-Jae)は語る。

 隣国の日本も同じような単一民族国家だとチェは言う。しかし、日本は移民の歴史が韓国より長く、外国人の親を持つスター級のファッションモデルがすでに大勢いる。だがたとえそうだとしても、アフリカ系米国人を父に持つ宮本エリアナ(Ariana Miyamoto)が2015年にミス・ユニバース・ジャパンに選ばれた際は、両親が日本人ではない女性が国の代表を務めることに対して公然と非難される事態が起き、日本社会における他民族の受け入れ態勢がいまだ限定的であることが露呈した。