■「この場所には敬意がある」

 ピラニアチームのメンバーらは、いくつかの格闘術を試し、最終的にクラブマガを採用した。チーム名は、アマゾン川に生息する凶暴な魚と、ブラジルで女性を意味する下品な俗語の両方にちなんで付けられたのだという。

 グループ創設者で、リオ在住のトランスセクシャル、ララ・リンカーン・ミラネス・リカルド(Lara Lincoln Milanez Ricardo)さん(31)は、「今の時代、攻撃されたら自分で身を守る能力を持たなければならない。怖いという気持ちが顔に出たら危険性は増す」と語った。

 同じくグループの創設者の一人で、普段は弁護士として働くアリソンさん(39)は、「自己防衛という考え以上に、これまでLGBTが閉め出されていた場所に足を踏み入れたことに意味がある」と述べ、国内の格闘技スクールに存在する「マチズモ」に触れた。

 事実、このリオのジムは、これまで偏見によって判断され、ひどい扱いを受けてきた人々にとって安息の地となっている。「ここでは私を変な目で見る人もいないし、自分が選んだトイレに入ろうとするのを止める人もいない」と、リカルドさんは言う。

 ピラニアチームのメンバーが受講しているレッスンは、ブラジリアン柔術の子ども向けのクラスが終わった後に、週2回行われている。

 リカルドさんは「最初は、子どもたちから少し笑われたこともあったけど、先生が子どもたちを叱った。この場所には敬意がある」「私たちのことを何の価値もないとみなす社会の真ん中にありながら、この場所には偏見などないし、自信がみなぎってくる」と語った。(c)AFP/Louis GENOT