【7月4日 AFP】頻発する暴動や殺人、脱走──超過密状態のメキシコの刑務所の危機は、麻薬密輸組織(カルテル)の浸透と刑務所当局の腐敗により悪化の一途をたどっている。

 メキシコの刑務所をめぐっては、2015年に「エル・チャポ(El Chapo)」こと麻薬王のホアキン・グスマン(Joaquin Guzman)受刑者が脱走したほか、昨年には、北部ヌエボレオン(Nuevo Leon)州モンテレイ(Monterrey)の刑務所で暴動が発生し、49人が死亡している。こうした事件を通じて、同国政府が直面する問題がはっきりと浮かび上がった。

 司法監視機関フリメトリア(Jurimetria)のギジェルモ・セペダ(Guillermo Zepeda)代表は、この危機的状況には「超過密な環境と犯罪組織の浸透」との2つの要因が関係していると話す。

 エンリケ・ペニャニエト(Enrique Pena Nieto)政権はこの刑務所の問題について、設備の改善や刑務所職員の増員および賃上げなどで対応していくことを明らかにしている。

 同政権はこの1年間で刑務所の収容人数を約3万人削減することに成功した。だが現在収容されている受刑者21万6831人のうち、58%はいまだ超過密状態に置かれており、また国内の刑務所375か所の3割以上で収容定員を超過しているという。

 一部の刑務所では反社会的勢力が幅を利かし、権力をめぐって内部抗争を繰り広げるため、暴動や殺人、脱走などが起きる。

 今年に入ってからも刑務所内での銃撃戦や火災は起きている。北東部タマウリパス(Tamaulipas)州では受刑者29人が脱走する事件もあった。また、シナロア(Sinaloa)州では、グスマン受刑者の強力な麻薬密輸組織「シナロア・カルテル(Sinaloa Cartel)」創立者の一人、フアン・ホセ・エスパラゴサ(Juan Jose Esparragoza)容疑者の息子が刑務所から脱走している。