■「日没街」

 米国の画家ノーマン・ロックウェル(Norman Rockwell)の作品に凝縮されているように、ルート66は多くの人にとって今よりも純朴な米国のイメージをかき立てることだろう。だが、黒人の旅人が見たルート66は、もっと暗い側面を持っていた。

 この国道に沿って位置する89の郡の半数は、アフリカ系米国人の日没後の通行を禁じた「サンダウン・タウン」として知られていた。

 作家のキャンダシ・テイラー(Candacy Taylor)氏は、ルート66の旅行ガイドを調べていたとき「ネグロ・モータリスト・グリーンブック(Negro Motorist Green Book)」を発見した。そのガイドには、ルート66沿いで黒人にとって安全とされる場所がリストアップされていた。

 さらにこのガイドは、観光客に人気のあるミズーリ(Missouri)州スプリングフィールド(Springfield)の「ファンタスティック鍾乳洞(Fantastic Caverns)」を運営しているのが白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」で、KKKが鍾乳洞の内部で十字架を燃やす儀式をしていたことも暴いていた。

「荒野の旅に出て自由をつかむという、いかにも米国らしい物語のすべて、そしてそれにまつわる記号や象徴は、黒人にとってはまったく別の物語だった」とテイラー氏は言う。「マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)やエルビス・プレスリー(Elvis Presley)のように、ルート66は米国の象徴の一つ。でも、それは完璧でも光輝いてもいない。その象徴、その幻想の米国の姿には、多くの亀裂が入っている」(c)AFP/Jocelyne ZABLIT