【6月20日 AFP】ネコは古代エジプトを「征服」するはるか以前に、石器時代の農耕民を魅了していたとする研究論文が19日、発表された。DNA分析で明らかになったところによると、これ以降にネコの家畜化と愛玩動物化が世界中に広まっていったのだという。

 原産地を出て世界に拡散した最初の野生ネコで、今日の飼いネコの祖先となったのは、リビアヤマネコ(学名:Felis silvestris lybica)であることが今回、研究で明らかになった。小型でしま模様のある中東産の亜種は全世界に生息地を拡大させるまでに上り詰めた。

 リビアヤマネコは約6000年前、現代のトルコ周辺のアナトリア(Anatolia)地域から船で欧州に渡った可能性が高い。「リビアヤマネコの世界征服は新石器時代に始まった」と、論文の執筆者らは記している。

 石器時代の最終章に当たる新石器時代には、それまで狩猟採集民として各地を放浪していた先史時代の人類が作物の栽培と恒久的な村の構築に初めて着手した時期だ。そして、農耕の始まりとともに収穫物を食い荒らすネズミが現れ、これにネコが引きつけられた。

 米科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に掲載の論文では、「納屋や村、船上などのネコは古代社会に対して、害獣、特に経済的損失や病気の原因となるげっ歯類の有害動物を駆除する極めて重要な防御手段を提供した」とある。

 研究チームは今回、野生のネコ科動物が現在知られているような、ソファで寝そべるかわいらしい飼いネコに姿を変えた背景にあるものについての論争に終止符を打つべく、埋葬やミイラ化された古代のネコ230匹のDNAを分析した。

 古代エジプトで、像や絵、死骸のミイラなどによって「不滅化」されたネコ科動物が明白な崇拝の対象となっていたことを根拠に、ネコを初めて家畜化したのは紀元前数世紀ごろの古代エジプト人と考える人は多い。しかしその一方で、地中海の島国キプロスにある紀元前7500年の子どもの墓で発見されたネコの骨を、「肥沃な三日月地帯(Fertile Crescent)」の古代文明がエジプトより早くネコを家畜化した証拠として指摘する説もある。