【6月19日 AFP】タコの触手の吸着力にヒントを得た画期的な吸着パッドを、韓国・成均館大学(Sungkyunkwan University)の研究チームが開発した。ぬれた面や油が付着した面でも機能し、医療や産業分野での多大な活用が期待される。

 AFPの取材に応じた研究者によると、パン・チャンヒョン(Changhyun Pang)教授らの研究チームは2年前に、ロッテ(Lotte)のスーパーで買ったタコの触手の吸盤を顕微鏡で観察・分析。この結果を基にチームは、極小の強力な吸盤で覆われたポリマーパッチを作成した。指の爪程度の大きさのこのパッチで水中では最大400グラムの物体を持ち上げることができる。また耐久性にも優れ、1枚のパッチは1万回以上の吸着と脱着の繰り返しにも耐えるという。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に先週発表された論文は「タコからヒントを得たこの(吸着)システムは、シリコンやガラスのほか、(乾いた状態、湿った状態、水中、油分付着といった)種々の不都合な状態の表面に対し、強力で非常に耐久性のある吸着力を示した」と述べている。チームは、人間の肌も含めた乾いた面とぬれた面でこの吸着パッドを試用した動画も発表している。

 パン教授によると、これまでは強力な化学物質を使用せずに水中での吸着力を維持できる吸着システムが存在しなかった。今回開発された新吸着パッドには化学的な粘着物質は含まれていないため、傷口の縫合などの医療目的での使用が期待できると同教授は語った。チームでは3年後の実用化を目指しているという。(c)AFP