【6月19日 AFP】英ロンドン(London)北部のフィンズベリー・パーク(Finsbury Park)で19日未明、車1台が歩行者に突っ込み1人が死亡、8人が負傷した現場近くのモスク(イスラム教の礼拝所)は、かつてイスラム過激派の温床として知られていたが、新しい指導者の下で地域への関与を深めるなど、近年は様変わりしていた。

 現場は、フィンズベリー・パークの幹線道路セブン・シスターズ・ロード(Seven Sisters Road)。英国イスラム協議会(MCB)のハルン・カーン(Harun Khan)事務局長は、断食月「ラマダン(Ramadan)」の夜礼拝を終えてモスクを出た信者たちを、バンが「意図的に」はねたと指摘している。

 MCBのミカード・バーシ(Miqdaad Versi)事務局次長によると、現場はモスク近くのセブン・シスターズ・ロード沿いにあるムスリム・ウェルフェア・ハウス(Muslim Welfare House)の外だという。

 フィンズベリー・パーク・モスク(Finsbury Park Mosque)では1997年から2003年まで、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)を支援し誘拐事件に関与したとして現在米国で収監中のアブ・ハムザ(Abu Hamza)服役囚が指導者として過激な説教を行い、イスラム過激派の温床として悪名が高かった。

 アブ・ハムザ服役囚は、民族的憎悪の扇動と殺人教唆の罪で英国で有罪判決を受け収監された後、アルカイダとの関与をめぐって米国に身柄が引き渡され、2015年にニューヨーク(New York)で終身刑の判決を受けた。

 一方のフィンズベリー・パーク・モスクは近年、新しい指導者の下で様変わりしていた。2015年に仏パリ(Paris)で起きた連続襲撃事件の際には、イスラム教への理解を深めてもらおうとのMCBの企画に参加し、施設を一般公開した。

 しかし、指導者の変更や地域社会との関わりを深める取り組みにもかかわらず、パリの事件後にモスクには多くの脅迫メールや手紙が届いたという。

 地域団体ラマダン・ファウンデーション(Ramadhan Foundation)のムハンマド・シャフィク(Mohammed Shafiq)代表は、「過激なイスラム教嫌悪が何年にもわたって増え続けている」と指摘。もし車が意図的に突っ込んだと確認されれば「テロ攻撃と分類されるべきだ」として、「英国のイスラム社会は、全ての良識ある人々に対し、この邪悪な暴力に立ち向かうよう求める」と訴えた。

 イスラム教徒の人権擁護団体「ケージ(Cage)」によれば、イスラム教徒を標的としたヘイトクライム(憎悪犯罪)は急増している。ケージは声明で、「冷静さを保ち、ただでさえ不安定でつらい状況をあおることのないよう最善を尽くすことを、全ての人々に強く求める」と訴えた。(c)AFP/Rosie SCAMMELL