■食物連鎖でいずれ人の栄養分にも

 だが、この体の細長いアメリカミズアブの幼虫たちは、生ごみを処理する以外でも役に立ってくれる。

 丸々と太った幼虫は、ニワトリ、魚、カメなどの生き餌、あるいは乾燥飼料として販売される。栄養成分の最大63%がたんぱく質、36%が脂質だ。幼虫は、生ごみからたんぱく質と脂質を摂取し、やがて飼料として食べられる家畜を通して人間の食物連鎖に組み込まれ、栄養分を還元してくれる。また、幼虫の排せつ物は有機肥料にもなる。

 中国、カナダ、オーストラリア、南アフリカをはじめとする国々では、家禽(かきん)や養殖魚に虫を飼料として与えることが法律で認められている。

 欧州の昆虫産業を代表する非政府組織(NGO)「食料・飼料用昆虫の国際プラットフォーム(IPIFF)」のクリストフ・デリアン(Christophe Derrien)事務局長は、「米国や欧州連合(EU)では、(虫を飼料とすることは)もっと厳しく制限されている」と指摘する。だが、EUでも今年7月から魚の養殖場で昆虫由来のたんぱく質を飼料として与えることができるようになった。

 食品廃棄物のリサイクルは、環境面だけでなく経済面でも利益をもたらし得る。フーさんはアメリカミズアブの生きた幼虫と有機肥料を販売して十分な収入を得ており、電気代、人件費、運送費、食品廃棄物の仕入れ代といった費用を差し引いても、フーさんの年収20万~30万人民元(約330万~490万円)は中国ではかなりの高所得だ。

 アメリカミズアブ農場が中国に誕生したのは3年前。以来、今では全国各地で目にするようになったのも不思議ではない。

 ワンさんは、「今年、成都周辺でも新たにアメリカミズアブ農場が3~4か所、開設されることになっている」と語った。「その狙いは、廃棄物を有用なものに変えることだ」(c)AFP/Ludovic EHRET