■通常レベルの最大215倍のトリチウム

 このプロジェクトは開始時点から論争の的となっており、原子力発電に関する数々の懸念が浮かび上がっている。反対派は施設拡張阻止の理由として、気候変動による海面上昇、高潮の危険性、放射性廃棄物の取り扱い、そして飲用水と近隣に位置するエバーグレーズ国立公園(Everglades National Park)に生息する野生生物への脅威を挙げている。

 また反対の声を上げる人々は、周辺の人口密集地域からの非常時における避難が困難であることを指摘。マイアミデード(Miami-Dade)郡には260万人が暮らしている。

 漁船船長で原発プロジェクト阻止を訴える活動家、ダン・キプニス(Dan Kipnis)氏は「いつか水没してしまう原発への数百億ドルの投資(の意図)はまったく理解できない」と語り、「ここから生じる高放射性廃棄物も一緒に沈む」ことを指摘した。

  同発電所の拡張計画に対する法的異議申し立てが始まったのは2010年。今年5月にも原子力安全許可会議(Atomic Safety and Licensing Board Panel)を前に審理が行われた。ここで争点となったのは、フロリダの多孔性石灰岩が、有毒化学物質の飲料水への浸透なしに、地下に注入された廃水を本当に封じ込むことができるのかということだ。

 現在、ターキーズポイントの原子炉2基は複数のクーリングカナル(冷却運河)を使用して廃水の処理を行っている。これらのクーリングカナルをめぐっては昨年、マイアミ(Miami)ビスケーン湾(Biscayne Bay)の海水に、通常レベルの最大215倍の放射性同位元素のトリチウムが見つかったのをきっかけに、近隣の国立公園への漏出が確認された。

 3人の審査員から構成される安全許可会議は今年中に、米原子力規制委員会(NRC)が運転許可を与えるべきか否かについての判断を下すことになっている。