【6月16日 AFP】シンガポール建国以来、同国を牛耳ってきたリー(Lee)一族の一員で、リー・シェンロン(Lee Hsien Loong)首相の弟のリー・シェンヤン(Lee Hsien Yang)氏が15日、当代限りで一族は政界から退くべきだと語った。リー一族は建国の祖、故リー・クアンユー(Lee Kuan Yew)氏の遺産をめぐり、きょうだい間で苦い確執が起きている。

 シェンロン首相が自らの政治課題実現のために父の遺産を悪用しているときょうだいたちが非難したことで、統治の厳格なシンガポールが揺れている。

 シェンヤン氏と妹のウェイリン(Lee Wei Ling)氏は14日、6ページにわたる声明を発表し、シェンロン首相が権力を悪用していると強い言葉で非難するとともに、シェンロン首相を指導者として信頼できなくなったと述べた。

 シェンヤン氏はAFPに電子メールで「この国はわが一族よりも大きくあらねばならない」と述べた。

 この騒動では、シェンロン首相と大きな影響力を持つ妻のホー・チン(Ho Ching)夫人が、息子のホンイー(Li Hongyi)氏を後継者にする政治的野心を抱いているときょうだいたちが主張したことで、一族の継承問題も露呈した。

 政界ではなく財界に進んだシェンヤン氏はまた、自分自身の息子について、米ハーバード大学(Harvard University)の研究者で、政界入りへの関心は持っていないと語った。同氏は「誰であれ、リー一族の3世代目が政界入りすることは、シンガポールのためにならないと息子は考えている。長男と私の政治に対する見解は完全に一致している」と述べた。

 一方、シェンロン首相は後継に関するきょうだいたちの主張を「ばかげている」と否定するとともに、きょうだい間の確執が世間の目にさらされたことに対する悲しみを表明した。さらに息子のホンイー氏も15日、フェイスブック(Facebook)に「こんなことを言って意味があるかどうかは分からないが、私は政治に心底関心が無い」と投稿した。

 都市国家シンガポールは1959年に英国から自治権を獲得して以来、人民行動党(People's Action Party)が一党支配を続けてきた。1965年の独立以降、3人の首相しか誕生していないが、そのうち2人がリー一族の出身だ。(c)AFP/Elizabeth LAW