【6月16日 AFP】英ロンドン(London)西部の高層住宅で発生した大規模火災で、犠牲者にシリア難民の男性が含まれていることが明らかになった。シリアの民主化を支援する団体が15日、氏名を公表した。男性は内戦で荒廃した祖国の再建を夢見て大学で土木を学んでいたというが、志半ばで命を落とすことになった。

 24階建てのグレンフェル・タワー(Grenfell Tower)で14日未明に始まったこの火災で、犠牲者の氏名が公表されたのも初めて。

 平和や自由を求めるシリア人を支援する在英団体「シリア・ソリダリティー・キャンペーン(Syria Solidarity Campaign)」によると、亡くなったのは14階に入居していたシリア難民のモハメド・アルハジャリ(Mohammed Alhajali)さん(23)。

 2014年に兄のオマル(Omar)さんと共に英国に渡り、ウエスト・ロンドン大学(University of West London)で土木工学を学んでいた。「いつの日か祖国に戻り、シリアを再建すること」が夢だったという。

 火災発生当時、アルハジャリさんはオマルさんと一緒に室内にいたが、避難しようとした際にはぐれてしまった。オマルさんだけが生き延び、病院で治療を受けているという。

 同団体は声明で「モハメドさんはシリアでの戦火や死から逃れるため、危険な旅をして英国にやって来たが、その英国の自宅で火事に遭うことになった。モハメドさんは安全を求めてこの国にやってきたというのに、英国は彼を守れなかった」と悔しさをにじませた。

 アルハジャリさんは最期の時、シリアの家族に電話しようとしたがつながらず、シリアにいる友人と話していたという。「モハメドさんは友人に別れを告げ、火が迫ってきたと言った。彼はその友人に家族へのメッセージを託した」

 アルハジャリさんは17日、ナチス・ドイツ(Nazi)を支持する男に昨年暗殺されたジョー・コックス(Jo Cox)下院議員(当時)の追悼行事の一環として、ロンドン北部で行われる難民コミュニティーの集会に出席する予定だった。

 英BBCによると、アルハジャリさんの両親が遺体との対面のためダマスカス(Damascus)から英国に渡航できるように、家族が査証(ビザ)を取得しようとしているという。(c)AFP