【6月14日 AFP】物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)が物理学や神、イスラエルについて所感をつづった同僚への手紙数通が、エルサレム(Jerusalem)で6月20日に競売に掛けられる。

 競売会社ウィナーズ(Winner's)のウェブサイトによると、5通の署名入りの手紙は1951年から1954年に英語で書かれたものだという。落札予想価格は合計で3万1000ドル~4万6000ドル(約340万円~510万円)。

 著名な物理学者デビッド・ボーム(David Bohm)氏に宛てた1951年の手紙では、ボーム氏が量子理論と「相対論的場の理論」とを結びつけていることについて語っている。

 タイプされた手紙には、手書きの数式が丁寧に加筆されており、アインシュタインの署名も入っている。

 ユダヤ移民の両親のもとに米国で生まれたボーム氏は、アインシュタインとともに米プリンストン大学(Princeton University)で教壇に立っていたが、ジョセフ・マッカーシー(Joseph McCarthy)上院議員による反共産主義的な「魔女狩り」によって同大学での職を失い、その後ブラジルへと移った。

 ブラジル・サンパウロ(Sao Paulo)に居住していたボーム氏に宛てた1954年の手紙でアインシュタインは、複雑な理論研究に苦闘する友人に共感の言葉をつづった。手紙には「もし神が世界を創造したのだとしたら、彼の一番の気遣いは、われわれにとって世界を簡単に理解できるものにしないことだったに違いない。50年来それを強く感じている」と書かれている。

 ウィナーズによると、手紙はボーム夫人の遺品の中から出てきたものだという。

 1954年のもう一通の手紙は、1948年に建国宣言をしたイスラエルにボーム氏が移住する可能性に言及している。アインシュタイン自身は、イスラエルからの大統領就任要請を断っており、移住の機は熟していないとの考えを持っていた。

 アインシュタインは1955年の死去時に、自らの研究資料や手記などをエルサレムのヘブライ大学(Hebrew University)に残しているため、同大には世界最大のアインシュタイン文書のコレクションがある。(c)AFP