【6月9日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が首都と称するシリアのラッカ(Raqa)を奪還するために、米国が支援するクルド人とアラブ人の合同部隊「シリア民主軍(SDF)」が攻勢を強めている。

 ラッカをISから奪取すれば、問題は一つ解決するかもしれない。だが、また別の問題を生むだろう。この都市はシリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権とその北側のライバルであるトルコ政府も狙う戦略的要所だ。ISを追放した後、誰がラッカを支配するのだろうか。

■ラッカには今、誰が住んでいるのか?

 トルコとの国境から80キロに位置するラッカの人口は約30万人とされる。うち約8万人は、シリア内戦勃発後に、国内の他の地域から逃げてきた人々だ。

 フランスの地理学者、ファブリス・バランシュ(Fabrice Balanche)氏によると、内戦前のラッカの人口の大半はアラブ人だったが、約20%は「市の北部のスラムに集中していた」クルド人だった。

 だが内戦開始から2年後の2013年、反体制派と国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系の武装勢力がラッカを掌握。その1年後にはISの手に落ち、少数派の住民の大半が逃げた。

 クルド人、アルメニア人、シリア系キリスト教徒が逃げた今、「ラッカの人口は99%がスンニ派アラブ人だ」とバランシュ氏は言う。

■ラッカを統治するのは誰か?

 4月半ば、シリア民主軍はIS敗退後のラッカを動かしていくために「市民評議会」の創設を発表した。メンバーはラッカ出身者で構成するとしている。しかし、この評議会は、アラブ系の反体制派やその同盟相手のトルコなど、クルド人と敵対する勢力から認められていない。

 2015年に組織されたシリア民主軍は、米軍主導の有志連合の戦闘機や特殊部隊のアドバイザーらの支援を受けている。そしてその有志連合の主力は、民兵組織クルド人民防衛部隊(YPG)だ。米国は最近、YPGに初めて直接武器供与を行うことを決めた。

 この決定はYPGを「テロリスト」とみなすトルコ政府を激怒させた。YPGは、トルコからの分離独立を求める非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」とつながっているためだ。

 トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領は以前、クルド人抜きという条件の下ならば、ラッカの攻勢にトルコ軍も加わると主張していた。「米国はエルドアン首相に、クルド人がラッカを奪取するまで辛抱強く待つよう要請した」とバランシュ氏は言う。

 シリア政府は曖昧な態度を取っている。米国が支援する部隊が支配する領域の拡大を懸念する一方で、最近はシリア民主軍によるISとの戦いは「正当だ」と述べている。