【6月8日 AFP】メラノーマ(悪性黒色腫)の診断を受け、原発腫瘍部位付近のリンパ節を切除するごく一般的な手術を受けた患者は、この手術を受けなかった患者より余命が延びるわけではないとする報告書が7日、発表された。メラノーマは、皮膚がんの中で最も死亡率が高い。

 米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に掲載された報告書は、世界60か所以上の医療機関で1900人以上のメラノーマ患者を対象に行われた研究を基にしている。

 メラノーマと診断され、リンパ節1か所以上への転移がみられる場合、患者はその部位周辺のすべてのリンパ節を切除する広範囲な手術を受けるかどうかの決断を迫られるが、こうした処置は現在、標準治療と考えられている。

 リンパ節切除の利点は、がんの広がりを医師が見極めやすくなることだ。また患者によっては、無病期間を延ばせる場合もある。しかしだからといって、余命の延長につながるわけではない。この手術を受けた患者には副作用も多くみられ、約4分の1はリンパ浮腫(ふしゅ)を発症している。

 報告書の主執筆者で、研究の共同責任者を務めた米医療機関「シダーズ・シナイ(Cedars-Sinai)」系列の「アンジェルス・クリニック研究所(The Angeles Clinic and Research Institute)」外科腫瘍学部長のマーク・ファリース(Mark Faries)氏は、「今回の研究結果によって、こうした治療法が取られる機会は世界中で大幅に減るだろう」と主張。

「メラノーマ治療薬の臨床試験についても、現在進行中のものも実施予定のものも含め、多くの計画に影響を与える可能性がある」と述べている。(c)AFP