■治療が唯一の選択肢

 こうした若者たちがヘロインを買う金欲しさに犯罪行為に手を染めるケースは少なくないという。

 難民認定申請者がヘロインの使用で身柄を拘束された場合、尿検査を受け、その結果次第では社会福祉課の監督下に置かれることになる。ただし、刑務所に収容されることはない。

 ニルソン氏は、ヘロイン依存症患者には治療を受ける以外に選択肢はないことをAFPに説明した。

 難民認定申請者が重度のヘロイン依存症の場合、スウェーデンの国内各地にある治療専門施設に送られる。しかしニルソン氏によると、こうした施設もすでに過密状態にあるのだという。

■「本当に幸せ」

 保護者不在のクルド人難民認定申請者であるサリムさん(17)にとって、無償で教育や医療を受けられるスウェーデンは理想の環境だ。

 彼はまだ難民認定申請の受理を待っている状態だが、スウェーデンに滞在することができて「本当に幸せ」だと語る。スウェーデンが2015年に受け入れた難民の数は、国民1人あたりで見ると欧州で最も多かった。

 今は家族に会えなくて寂しいと話すサリムさん。保護者不在の未成年でも、問題を抱えてさえいなければドラッグにおぼれることはないはずだと語気を強める。しかし、その直後に「問題を抱えていない人なんてここには一人もいない」と述べ、そのまま下を向いてしまった。(c)AFP/Ilgin KARLIDAG