【6月2日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が発表した、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」からの離脱は、世界の団結に衝撃を与えている。だが協定そのものにとっては、実は「天の恵み」となるかもしれない。観測筋が1日、語った。

 同協定からの離脱により、化石燃料産業に大きく影響されているトランプ政権は、国連の気候対策に対する影響力を低下させることになる。

 20年にわたる国連の気候対策交渉で、発展途上国の利益のためにロビー活動を行う団体クリスチャン・エイド(Christian Aid)のモハメド・アドゥ(Mohamed Adow)氏は「トランプ(政権)が協定の外にいることは、内部から足を引っ張るよりまし」と語る。

 数十年の交渉を見守ってきた観測者らは、昨年11月の米大統領選以降、現行の気候会議に影響を与えてきた、パリ協定に対する米国の立ち位置をめぐる混乱の終結を歓迎。そしてパリ協定からの離脱の結果として、経済的にも外交的にも最も打撃を受けるのは米国だと指摘した。

 仏大気汚染研究技術専門センター(CITEPA)によると、米国の再生可能エネルギー部門では2016年、約80万人が従事していた。これは化石燃料部門の約5倍にあたる。

 米国の企業数百社は、トランプ政権にクリーンエネルギー路線に留まるよう求めており、観測筋も米国が経済的損失を被るだけでなく、広範な外交力を投げ捨てることになるだろうと論じている。

 米国の離脱から生じる懸念の一つには、他の汚染源国が、米国の後に続くのを助長することだ。今のところ、世界のその他の温暖化ガス排出大国──中国(1位)、欧州連合(EU、2位)、インド(4位)──は、いずれもパリ協定への支持を改めて表明している。

 もうひとつは資金面の懸念だ。トランプ大統領は、発展途上国が協定への調印の条件としていた、国際気候基金への拠出を大幅に削減する提案をしていた。バラク・オバマ(Barack Obama)前米大統領政権下では、米国は「緑の気候基金(Green Climate FundGCF)」の最大の貢献者だった。(c)AFP/Mariëtte Le Roux