【6月12日 AFP】赤と白のユニホームを着たチアリーダー数十人が、稽古場に流れるKポップに合わせて、白いポンポンを振りながら軽やかに踊っている。メンバーは皆、年配の女性たちだ。

 2時間の練習も半ばを過ぎたあたり。高齢チアのほとんどは息を切らし、汗まみれになっている。だが、膝が悪くても、腰痛持ちであっても、それを言い訳にして休もうとはしない。チアのおかげで、健康で若々しくいられている──。皆そう考えているのだ。

「ここに来ているので、薬も飲まなくて済んでいるんです。見た目は年寄りでも、心は若いままなんですよ」。82歳のオ・グムニュ(Oh Geum-Nyu)さんはそう語る。

 オさんは韓国東海岸・三陟(Samcheok)市を拠点とするチアリーディングクラブ「チアマミー(Cheer Mommy)」のメンバーの一人。チーム30人の平均年齢は75歳というから、その中でも年長のほうだ。

 アジア4位の経済規模を持つ韓国では、平均寿命が急速に伸びている。英医学誌ランセット(The Lancet)に掲載された論文によれば、2030年生まれの女性の平均寿命は90歳と、世界最長になる見通しだ。

■家父長制の束縛

 こうした長寿の裏には社会的要因もあるとの見方がある。ソウル(Seoul)にある梨花女子大(Ewha Women's University)のチョン・スンドル(Chung Soon-Dool)教授(社会福祉学)は、韓国の高齢女性について「気楽な集まりに参加したり、人間関係を新しく作ったりするのが大好きなことが、エネルギーの源になっているのではないか」と推測する。

 60代以上の韓国人女性では、「女は家にいて子どもを育てるもの」と期待される極めて家父長的な社会に生きてきた人が多い。そうした女性の中には、家族の面倒を見る役回りを引退してようやく、自分で選んだことを追求する人も出てきている。

「7人いる孫たちの養育がひと段落ついた頃に、友だちからこの場所のことを教えてもらったんです」と話すチアマミーのメンバー、アン・ヨンジャ(Ahn Young-Ja)さん(65)もそんな一人だ。