【5月29日 AFP】17インディカー・シリーズは28日、第6戦インディアナポリス500(Indianapolis 500)の決勝が行われ、アンドレッティ・オートスポーツ(Andretti Auto Sport)の佐藤琢磨(Takuma Sato)が優勝を果たし、日本人ドライバーとして初の快挙を成し遂げた。

 佐藤はレース終盤、インディ500で通算3度の優勝を誇るチーム・ペンスキー(Team Penske)のエリオ・カストロネベス(Helio Castroneves、ブラジル)をオーバーテークして勝利を飾り、2012年の苦い思い出を一掃した。

 チームオーナーのマイケル・アンドレッティ(Michael Andretti)氏から手荒い抱擁で祝福されると、佐藤は満面の笑みで「信じられない!」と歓喜した。さらに、これまでインディカー・シリーズではわずか1勝しかしておらず、日本からどれほどの反響があるかについて、「大騒ぎだ。どんなことになるなんて想像もできないよ」とコメント。インディ500で史上4人目となる通算4勝を目指していたカストロネベスを2位に抑えた際には、無線で叫びながらこぶしを突き上げていた。

 レースは予選でポールポジションを獲得したチップ・ガナッシ・レーシング(Chip Ganassi Racing)のスコット・ディクソン(Scott Dixon)が大クラッシュに遭遇したほか、フォーミュラワン(F1、F1世界選手権)のスターで、今回はマクラーレン・ホンダ・アンドレッティ(McLaren Honda Andretti)のマシンでスポット参戦したフェルナンド・アロンソ(Fernando Alonso)がエンジントラブルでリタイアするという波乱の展開となった。

 その中で佐藤が最も予想外のパフォーマンスを披露したことについて、アンドレッティ氏は「彼は信じられない走りをみせた」と称賛。2列目からスタートした佐藤に、0.2秒差で敗れたカストロネベスも「(終盤の)彼の走りにはどうすることもできなかった」とたたえた。

 アラブ首長国連邦・ドバイ(Dubai)出身のルーキーでデイル・コイン・レーシング(Dale Coyne Racing)のエド・ジョーンズ(Ed Jones)が3位に入り、今レース最多の50周でトップを走行したチップ・ガナッシのマックス・チルトン(Max Chilton、英国)が4位、その同僚のトニー・カナーン(Tony Kanaan、ブラジル)が5位に続いた。

 チーム・ペンスキーのファン・パブロ・モントーヤ(Juan Pablo Montoya、コロンビア)は6位、そして前回王者でアンドレッティ・ハータ・オートスポーツ/カーブ・アガジャニアン(Andretti Herta Auto Sport w/Curb-Agajanian)のアレクサンダー・ロッシ(Alexander Rossi、米国)が7位に食い込んだ。

 史上最多となる15人のドライバーによってトップが35回も入れ替わる激戦となった今レースで、歴史的勝利を飾った40歳の佐藤は、2012年の同レース最終周で先頭に立っていたチップ・ガナッシ・レーシングのダリオ・フランキッティ(Dario Franchitti)を抜き去ろうとしてスピンし、壁に激突してしまった雪辱を果たした。

 2012年の苦い経験にもためらうことなく、カストロネベスをとらえるチャンスをものにした佐藤は、「エリオは一流のレーサーであり、自分が真の王者と競っていることは分かっていた。残り3周で彼が横に並んできたとき、ここが勝負どころだと見極めて全力を出し切った」と語った。(c)AFP/Marc Antoine BAUDOUX